転職面接で「採る人」と「見送る人」を分ける面接官の基準
転職面接で採用か見送りかを分ける基準を、10年以上の採用担当経験を持つ田中圭が面接官目線で語る回。自走力の見抜き方、リファレンスチェックとSNS調査の実態、職務経歴書に数字を書く際の落とし穴、業界プロトコルと専門用語の罠まで、具体的な手法と事例を交えて解説する。
この回が答えていること
面接官は候補者の「自走力」をどうやって見抜くのか?
「上司からの最新フィードバック」「テンションが上がった仕事」を聞き、自分の役割を細かく分解させる。話の解像度の差や声のトーンで、実際に担当したかどうかの上滑り感を察知する。あえて反論し、知らない話題を振ることもある。
職務経歴書に数字を書く際に何を間違えやすいのか?
絶対値だけでなく前年比や比率を並べ、相手が文脈を判断できるよう書く必要がある。「3億伸ばした」もリクルートほどの売上規模の中ではインパクトが全然違う。自分の業界では当たり前の数字も、読み手には伝わらない。
転職回数やSNSは選考にどう影響するのか?
転職回数が多い場合はリファレンスを徹底的に取りに行く。SNSは面接後に全件チェックし、匿名のつもりでも特定されることがある。実際にSNSの内容で見送った候補者は複数いる。
面接官が気にしないことと、実はきっちり見ていることは何か?
学歴・緊張・資格は気にしない。中途では前職で何をやったかだけを見る。転職回数とリファレンス、SNSは真剣に確認する。
業界特有の「プロトコル」や専門用語は面接でどう機能するのか?
出版社で「今一番会いたい人は誰か」は企画の有無まで問う業界コードで、知らないとリトマス試験紙で落ちる。「LTV」もスタートアップと金融では意味が異なり、専門用語攻めで理解度を測る面接官もいる。
新卒と中途で見るポイントは全然違う
田中は10年以上採用担当を務め、グループ面接含め年間100人規模、個別面接だけで延べ200〜300人の新卒を、中途は50〜100人ほどを見てきた。新卒採用ではポテンシャル・ガッツ・カルチャーフィット(「白紙」前提)を重視するのに対し、中途採用では「この能力が確実にここに生かせる」即戦力性を最優先する。ただしカルチャーフィットはどちらにも必須で、「自分でボールを転がして勝手にプロジェクトマネジメントを始められる人」でないとお互い不幸になると言い切る。成長させてもらおう、学んでいこうという姿勢の人は口には出さなくても面接で滲み出るので、それを炙り出すのが面接の仕事だ。
「自走力」と「本当の役割」の見抜き方
田中が使う手法はいくつかある。
**上司からの最新フィードバックを聞く**:「もっと情報共有してほしい」と言われている人はおそらく実際にそうで、「好きにやっていいよ」と言われている人は意思が薄い傾向がある。直近のフィードバックは嘘をつきにくい。
**「テンションが上がった仕事」を聞く**:成果が出た仕事ではなく、一番テンションが上がった仕事を聞く。本当に熱があるときに自分の役割を最大限発揮しているはずで、そこで話の解像度を確認する。小さい仕事やプライベートのエピソードが出てきてもよく、その方が嘘をつきにくい。
**役割を細かく分解する**:「営業案件を発掘→企画書作成→役員会通過→実行」という流れで、自分がどのフェーズを担当したかを具体的に問う。多くの人は全部やったかのように語るが、企画書の「叩き」を作ったのか「完成まで持っていった」のかでは全然違う。自分の担当外の話をするときに「上滑り」が出る。料理好きと言いながら調理済みの素材を扱う人と魚をさばく人では説明の解像度が違うのと同じだ。
**あえて反論する**:候補者のトロフィーエピソードに「でもそれって〜じゃないですか」と反論を入れる。圧迫ではなく、ストレス耐性と切り返しのパターンを短時間で見るため。急に無気力になる人も実際にいる。
**知らない話題を振る**:知らないことを「知らない」で終わらせるか、周辺知識から仮説を立てて会話をつなぐかを観察する。
なお、食事をしながらのカジュアルな面接も中途では多く使っており、鎧を外した瞬間に見える良さもあれば、関係性の境界線を踏み越えすぎる人の問題も出やすい。また、複数の面接官が評価を互いに共有しないよう徹底しているのも特徴だ。先に話した人が「いいやつ来たよ」と言うだけで、次の面接官の見方が引きずられてしまうからだ。
気にすること・気にしないこと
**気にしない**:学歴(中途ではほぼ見ず、今でも出身校を知らない人が多い)、緊張、資格。
**気にする**:転職回数。33歳で8社目などはわけあり物件の可能性が高く、リファレンスを徹底的に取りに行く。異性問題、すぐ飽きて辞めるタイプ、複数人でグループ転職するケースなどがリファレンスで浮かぶことがある。ただしリファレンスは正直に言ってくれる友人を選ぶことが重要で、「別に大丈夫だと思いますよ」という当たり障りのない回答は意味がない。
**SNS**:この収録に立ち会っていたスタッフ2人のアカウントも面接後に全件チェックした。匿名のつもりでも「特定班」がいて、IDの一致などで身元が割れることがある。内容がしょうもなくても採用する場合もあれば、内容が良くても問題があるアカウントもある。SNSで見送った候補者は実際に複数いる。
職務経歴書と連絡の書き方
長すぎる職務経歴書やDMは「丁寧という名の暴力」。熱い思いは分かるが、読み手の負担を先に考える必要がある。
最重要は**数字を文脈とセットで書くこと**。絶対値と比率(前年比など)を常に並べる。「3億伸ばした」もリクルート規模の売上における3億なのかが分からなければ評価できない。「面接を53回受けた」も、世の中の平均が3〜4回という前提があってこそ多いと伝わる。相手のフィールドに合わせた例え(「スイスのGDPと同規模」「フルマラソン3時間はゴルフのシングル相当」など)も有効だ。
業界プロトコルと専門用語の罠
出版社では「今一番会いたい人は誰ですか」という問いが「その人にどんな企画を持っていくか」まで込みで問われている。「地元のおじいちゃん」と答えると話が終わる。業界内で通じる「コードA」を知らないとリトマス試験紙で落ちる。
専門用語も罠だ。「LTV」はスタートアップ文脈ではライフタイムバリュー、金融文脈ではローン・トゥ・バリューを指す。わざと専門用語攻めにして理解度を測る面接官もいる。背伸びして専門家の振りをすると深掘りでボロが出る。内側の人向けと外側の人向けの両パターンで説明できるよう準備しておくことが重要だ。
この回の要点
- 「テンションが上がった仕事」「上司からの最新フィードバック」を聞くと候補者の実態が浮かびやすく、嘘をつきにくい質問として機能する
- 職務経歴書の数字は絶対値と比率を並べ、読み手が文脈を判断できる形で書かないと評価されない
- SNS・転職回数・リファレンスは真剣に確認される一方、中途では学歴はほぼ見られない
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。