10月12日 少々刺激的なネタがまな板に。「心」はDNA・遺伝が支配していると・・・。
ロバート・プロミン博士の著書『心は遺伝する』を題材に、遺伝が人の性格・知能・人生をどう左右するかを読み解く回。遺伝率が幼児期20%から65歳では80%に高まるという双子研究の衝撃的な結果と、大統領になった兄と麻薬密売人になった弟というクリントン兄弟の対照例を軸に、「親は子の人生をデザインできない」という命題に迫る。統合失調症の遺伝的傾向と天才の創造性の関係、アルツハイマーの環境スイッチ論にも踏み込む。
この回が答えていること
年をとると遺伝の影響は強まるのか、弱まるのか?
強まる。500組の双子を20年追った調査(1983年)によれば、遺伝率は幼児期20%、青年期60%以上、65歳時点で80%に達する。幼い頃の小さな遺伝的後押しが環境の選択を通じて雪だるま式に膨らむ「遺伝的増幅」が起きるためだ。
小学校の成績が良い子が中学以降に伸び悩むのはなぜか?
小学校の成績は親の影響を受けやすい「文字を読む能力」に依存するが、中学以降は「文字を理解する知能」が問われる。そこで知能の遺伝スイッチが入り遺伝率が急上昇するため、小学校で優位だった子が次々と追い抜かれることになる。
同じ家庭で育ったビル・クリントンとその弟ロジャーは、なぜあれほど違う人生を歩んだのか?
両親はどちらも政治家にしようとしたが、青年期にビルには「アメリカのために働きたい」、ロジャーには「アメリカで儲けたい」という遺伝子のスイッチが入った。ほんのわずかな偶然が重なった結果であり、親が子の人生を決定することはできない。
「頑張ればみんなできる子」という言葉は正しいのか?
嘘だと武田は断言する。遺伝的傾向に合わない扉はいくらやっても開かない。「できない」のではなく「違うことができる」のであり、自分の合鍵で開く扉を探すことが生きることだ。
遺伝子と天才・病気(統合失調症・アルツハイマー)にはどんな関係があるのか?
統合失調症の遺伝的傾向を持つ人には創造的思考の才能が伴いやすく、アリストテレス・ゴッホ・ジョン・レノン・ヘミングウェイもその傾向があったとされる。アルツハイマーは遺伝子単独では発症せず、複数の環境スイッチが重なって初めて発症するため、スイッチを間引くことでリスクを減らせる。
DNAと個人差——99%が同じでも「私」は生まれる
人間のDNAは30億の塩基対からなり、全人類の99%が同じ配列を持つ。残り1%、約3000万の塩基対のわずかな違いが個人差を生み出している。ただし遺伝子が人生を一方的に決定するわけではない。プロミン博士が言う「DNAのささやき」とは、人が人生で何かを選択した瞬間にDNAがその選択と合致してスイッチを入れるという「共同作業」だ。好き嫌いのえり分けにDNAが関与し、その積み重ねが「その人らしさ」になっていく。
遺伝の影響は年齢とともに強まる——幼児期20%から65歳で80%へ
500組の双子を20年にわたって追跡した1983年の調査から、遺伝率が年齢とともに急上昇することが明らかになった。幼児期は約20%、青年期には60%以上、そして65歳の時点では80%にまで達する。武田はこれを「80%が先祖の誰かに似ている自分」と表現した。親から受け継ぐのは遺伝子の50%に過ぎず、残りはアフリカ時代の人類の記憶まで含めた先祖全体に広がっている。幼い頃に遺伝子が小さく後押しした傾向が、環境の選択を通じて雪だるま式に膨らんでいく——これを「遺伝的増幅」と呼ぶ。
小学校の成績が中学以降に意味を失う理由
小学校では「文字を読む能力」が成績を左右し、この能力は親の影響を強く受ける。だから読書家の親を持つ子は高成績を取りやすい。ところが中学に上がると「文字を理解する知能」が求められるようになり、そこで知能の遺伝スイッチが入る。脳内のネットワークが成長とともに広がり、知能の遺伝率が急上昇するため、小学校で優位だった子が次々と同級生に追い抜かれることになる。テストは先生が点数をつけるためのものではなく、子供がどの扉を開けられるかを探す「合鍵探し」の場だと武田は語る。
同じ家庭でもこんなに違う——クリントン兄弟の謎
プロミン博士の第7章は「同じ家庭の子供なのになぜこんなに違うのか」がテーマだ。典型例がビル・クリントン元米大統領と弟のロジャー・クリントンである。ロジャーはホワイトハウス内で「ろくでなし」「頭痛の種」と呼ばれ、麻薬の密売・使用に手を染めた。両親はビルにもロジャーにも政治家を目指す教育と投資をした。しかし青年期に、ビルは「アメリカのために働きたい」、ロジャーは「アメリカで儲けたい」という選択をした。このほんのわずかな差が、大統領と麻薬密売人という結末に分けた。「ささやかな偶然によって遺伝子のスイッチが入り、阿弥陀くじの線をたどるようにその人がその人を作っていく」と著者は説明する。同じ偶然が3回も4回も続くはずがなく、同じ形になるはずもない——だから兄弟はこれほど違う。
遺伝は運命ではなく「扉の合鍵」——そして天才の裏側にある狂気
武田が繰り返し強調するのは「遺伝は運命ではない」という点だ。大谷翔平はあの両親からしか生まれないが、あの両親が同じ子を再び育てることはできない。「頑張ればみんなできる子」は嘘であり、この一言がかえって子供を苦しめると武田は断言する。遺伝子は「扉の合鍵」であり、合わない扉は諦めていい。合う扉を探すことが生きることだ。武田自身の例では、詩人・中野茂春の詩「歌」(「お前は腹の足しになるところ、ギリギリのところを歌え」)に大学時代に出会い、「あんたが大将」に代表される反骨的な作詞スタイルに火が灯った。これも遺伝子のスイッチが入った瞬間だったという。
プロミン博士自身が遺伝子検査を受けたところ、統合失調症のスコアが高かった。しかしこの傾向には「創造的思考の天才」という肯定的な側面がある。アリストテレス、ゴッホ、ジョン・レノン、ヘミングウェイもこの傾向を持っていたとされ、天才の才能の裏側には狂気があると著者は言う。アルツハイマーについては人口の10%がリスク遺伝子を持つが、複数の「環境スイッチ」が重なって初めて発症するため、スイッチをひとつずつ間引いていくことでリスクを減らせると述べて、この日の放送を締めくくった。
この回の要点
- 遺伝の影響は年齢とともに強まり、65歳では80%が先祖由来のものになる。遺伝と環境の「共同作業」で自分らしさが積み重なるのであって、遺伝が人生を一方的に決定するわけではない。
- クリントン兄弟(大統領と麻薬密売人)の対照例が示すように、親が子の人生をデザインすることはできない。遺伝子のスイッチを入れるのは偶然と環境の積み重ねだ。
- 遺伝は運命ではなく「扉の合鍵」。合わない扉を諦め、自分の鍵で開く扉を探し続けることが人生の要諦であり、学校教育の本来の意味でもある。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。