# 10月5日 私たちの体のDNAが心を作っている話です。 - Show: 武田鉄矢・今朝の三枚おろし - Published: 2026-10-05 - Canonical: https://podc.club/episode/625024986_1e2546d74305.html - Audio: https://traffic.megaphone.fm/NCB7587587121.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 武田鉄矢が行動遺伝学者ロバート・プロミン博士の著書『心は遺伝する』(河出書房新社)を取り上げ、体重・テレビ視聴時間・学業成績・友人選択まで遺伝(DNA)の影響を受けることを双子研究の具体的データで解説する。「教育格差」という言葉を「政治用語に過ぎない」と批判しつつ、武田自身が8歳の朝顔観察日記で「自分らしさ」に気づいた体験を交えながら、DNAが宿命ではなく「傾向」として人に宿るという考え方を語る。 ## この回が答えていること ### 「教育格差」という言葉はなぜ不正確だと武田は言うのか? 親の収入を均等にしてもテストをすれば0点から100点まで必ず差が出る。収入を平等にしても学力差は変わらず、遺伝的要因を無視した「政治にしか通用しない用語」だと武田は断じる。 ### プロミン博士はどんな研究手法で遺伝の影響を証明したのか? 生後間もなく別々の家庭に引き取られた一卵性・二卵性双生児を数十年にわたり追跡し、体重・言語能力・認知能力・テレビ視聴行動などで実の親との類似度を測定した。 ### 体重は遺伝と環境のどちらに、どれくらい影響されるのか? 体重の70%は遺伝の影響を受けることが判明。養子に出された双子を長期追跡すると、年を重ねるほど実の親の体型に近づいていく。 ### テレビの視聴時間や番組の好みも遺伝で決まるのか? テレビ視聴時間の3分の1、好む番組ジャンルの25%が遺伝で説明できる。別々の家庭で育った双子でも、視聴時間・つけっぱなし習慣・ジャンルの傾向が一致した。 ### 「自分らしさ」とDNAはどのような関係にあると説明されているか? DNAは宿命ではなく「傾向」として人に宿り、環境の中での選択を通じて少しずつ目覚めていく。遺伝子はその人の「青写真」を持ち、環境との相互作用で自分らしさが形成される。 ## 本文 ## 「教育格差」という言葉への違和感 武田鉄矢が今回取り上げるのは、行動遺伝学者ロバート・プロミン博士の著書『心は遺伝する』(河出書房新社)。原題は *How DNA Makes Us Who We Are*(いかにDNAは我々を作っているか)だ。 武田がこの本に手を伸ばしたきっかけは「教育格差」という言葉への違和感だった。教育格差とは、親の学歴・収入・職業などの社会的・経済的条件が子どもの学力に差を生むという概念で、「収入の差をなくせば学力差も縮まる」という政策論拠に使われる。しかし武田は問う。「親の収入をすべて等しくしたら、みんな同じ点数になるの?ならないでしょ」。テストをすれば0点から100点まで必ず差が出る。収入を平等にしても学力差は変わらない——武田はこれを「政治にしか通用しない不正確な用語」と断じ、プロミン博士の本がその直感を裏付けてくれたと語る。 ## プロミン博士の双子研究——体重と遺伝 プロミン博士が遺伝の影響を測るために採用した手法は、**双生児の長期追跡調査**だ。一卵性・二卵性双子を何十年にもわたり観察し、「育ち(環境)」と「生まれ(遺伝)」それぞれの寄与を分離しようとした。 まず驚くのが体重の結果だ。体重は食事や生活習慣——つまり「育ち」の産物だと思われがちだが、研究によれば**体重の70%は遺伝(生物学的な親)の影響**を受ける。生後間もなく別々の家庭に引き取られた双子を追跡すると、年を重ねるほど実の親の体型に近づいていく。武田自身も「76キロあった体重が60歳を過ぎてから63キロまで落ちて、父親に似た体型になってきた」と実感を語り、女性アシスタントも「母系の体型に似てきた」と頷いた。 ## テレビ視聴も遺伝の影響下にある 博士が次に調べたのはテレビの視聴行動だ。家に帰るとすぐテレビをつけて付けっぱなしにする人と、用事が済めばすぐ消す人——このテレビへの態度にも遺伝が関与していた。別々の家庭で育った養子の双子を比較すると、視聴時間・つけっぱなし習慣・好む番組ジャンル(スポーツ・ドラマ・コメディなど)が一致したのだ。**テレビ視聴時間の3分の1、番組の好みの25%が遺伝で説明できる**という。「遺伝と思わないでしょ、あの一人一個だからわかりにくいんだ」と武田は言い、兄弟姉妹の多い家庭で視聴傾向が一致する現象とも照らし合わせて説明した。 ## 学業成績の「遺伝率」と教育格差批判 博士は学業成績にも「遺伝率」という独自の指標を用いる。小学校段階の学業成績における遺伝率は**25%**。しかし博士はそこで止まらず、中学・高校・大学と全段階を追跡し、遺伝率が教育段階によって変化することを示した。 武田はこの数字を踏まえて言う。「DNAこそが、私たちがどんな人間になるかに関わる最も重要な系統的要因だ。教育格差などの政治用語がいかに不正確かを、先生はいくつもの資料で投げかけている」。 ## 遺伝は宿命ではなく「傾向」——武田の自己発見エピソード ここで武田が強調するのが、遺伝は決定論ではないという点だ。DNAは「傾向」として人に宿り、環境の中での選択を通じて少しずつ目覚めていく。学校を好きになるか嫌いになるか、良い友人を選ぶか悪い友人を選ぶか——そういった選択の傾向にも遺伝が関与しているが、それはあくまで確率的な青写真にすぎない。 抽象的な議論を自らの体験で補足する。クラス30人中20番台の学業不振児だった小学2年生の武田少年は、夏休みの自由課題として**朝顔の観察日記**に挑んだ。種から花が咲き、種を結ぶまでを毎日クレパスの絵つきで書き継いだところ、担任の女性教師に学級会で絶賛され「努力賞」の銀のシールをノートに貼られた。「8歳で人生初めて達成感という血のたぎりを感じた」と武田は振り返る。 さらに小学6年で図書館にて出会った『偉人伝』(世界の偉人約200名のエピソードをまとめた本)を、全員分の人生を物語として暗記するほど熱中した。武田はこの二つの体験を「DNAが囁いた自分らしさ」の発現として位置づけ、粘り強く物事を観察し物語として語る能力こそ自分のDNAに刻まれた傾向だと語った。 ## この回の要点 - 体重70%・テレビ視聴時間の3分の1・学業成績の25%など、私たちの行動や特質の多くは遺伝の影響を受けることをプロミン博士の双子研究が示している。 - 「教育格差」は親の収入が学力を決めるという前提に立つ政治用語であり、収入を均等にしても学力差は消えないことから遺伝的要因を無視した不正確な概念だと武田は批判する。 - 遺伝は宿命ではなく「傾向」として人に宿り、環境の中での選択を積み重ねながら自分らしさが目覚めていくとプロミン博士は説く。