大竹紳士交遊録 - 大竹まことゴールデンラジオ!いまは日本チャートの100位圏外です
【古谷経衡】2026年10月19日 日本人は何故デモに行かないのか
日本の若者がデモ・署名活動・ストライキにほとんど参加しない実態を、ISSPの国際比較データと労働争議の統計で数値化しつつ、その根本原因を明治期に遡る学校教育の「服従訓練」に求めた回。作家の古谷経衡氏が千葉県の公立中学校長のブログや大学進学率の変遷を材料に、日本人の「羊化」の構造を解説した。
この回が答えていること
他国と比べて日本人の政治参加率はどの程度低いのか?
ISSP2014年調査(20代対象)によるとデモ参加率は日本0.7%に対しフランス12%・アメリカ12.4%。政治家やメディアへの意見表明はいずれも日本0%で、署名活動ですら日本5%に対しイギリス48.1%・フランス40.7%と圧倒的な差がある。
日本のストライキはかつてどれほど盛んで、現在どう変化したか?
ピーク時の1973〜74年には年間約5,500件・1日約20件・延べ350万人が参加していたが、現在は年間約560件まで激減し、参加者数は1,000人を下回るとみられる。
なぜ日本の学校教育が政治的無関心を生み出すのか?
「気をつけ・回れ右」などの集団行動訓練は協調性の習得を名目にしているが、起源は明治期の軍隊養成に由来する服従の訓練であり、批判精神や自己表現を育てる教育とは正反対の文化が現在も継続している。
平成不況と大学進学率の上昇はデモ離れとどう関係しているか?
平成不況で将来不安が高まった90年代以降、大学進学率が80年代の30〜35%から60%へ上昇した。退学・停学のリスクを恐れて反抗できなくなった若者が従順なまま育ち、デモに行かない世代を形成した。
「冷笑系」はデモ離れの原因なのか結果なのか?
冷笑系は原因ではなく結果。従順教育を受けた人々が、声を上げる行為を「かっこ悪い」と嘲る文化を形成したのであり、冷笑系がデモ離れを引き起こしたわけではない。
国際比較データが示す「参加率ほぼゼロ」の実態
研究者の前田俊彦氏がISSP(国際社会調査プログラム)を用いて分析した2014年調査データ(2017年ニューズウィーク掲載)を軸に議論が進んだ。比較対象は日本・韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの20代。
過去1年間の署名活動経験:フランス40.7%、イギリス48.1%に対し日本は5%。デモへの参加:フランス12%、アメリカ12.4%、韓国3.6%、日本0.7%。政治集会への参加:ドイツ10.9%、アメリカ6.5%、日本0.7%。意見表明を目的とした政治家への接触(陳情):アメリカ9.9%、イギリス6.7%、日本0%。メディアへの意見表明(電話・投書など):ドイツ6.9%、韓国2.7%、日本0%。あらゆる指標で日本はほぼゼロだ。この調査は12〜13年前の20代が対象であるため、古谷氏(43歳)は「今の40代前後がおおむねこのトレンドを引き継いでいる」と指摘した。
ストライキも激減——ピーク時の10分の1以下に
労働争議(ストライキ)も同様だ。現在の年間件数は約560件だが、オイルショックが直撃した1973〜74年のピーク時には年間約5,500件・1日約20件が実施され、延べ参加者数は350万人に達していた。大竹まことさんは「中学のころ東横線がストライキに入って、自転車で学校まで行った記憶がある」と当時を振り返り、「利用者には迷惑だが、労働者にとっては正当なストライキ権の行使で、素晴らしいと思う」と評価した。現在の参加者数は1,000人を下回るとみられる。
なぜか——明治に始まる「服従の教育」
古谷氏が最大の原因として挙げたのは学校教育だ。千葉県の公立中学校長がホームページに掲載したコラムを紹介。「気をつけ・回れ右・右向け右などの号令に合わせた集団行動で協調性を身につける」「日本人が礼儀正しいと海外で評価されるのはこういった秩序のおかげ」と書かれていたが、古谷氏はこれを「協調性ではなく服従の訓練を言い換えているだけだ」と批判した。列に並ぶ習慣はアメリカでも同様に見られ、日本固有でも何でもない、とも述べた。
集団行動訓練の起源は明治期の軍隊養成にある。富国強兵のために即戦力の兵士を育てるうえで上官に反抗しない従順な人材を量産する必要があり、その構造が公教育に組み込まれ現在も続いているという。
平成不況・進学率上昇・日教組のパラドックス
転換点は1990年代の平成不況だ。将来への不安が大学進学率を押し上げ(80年代の30〜35%から現在は約60%へ上昇)、「退学・停学になれば受験できない」というリスク意識が若者を一層従順にした。経済不況期に進学率が上がる傾向は韓国でも確認されているという。
さらに、イデオロギー的には進歩的な日教組(日本教職員組合)が「国家ではなく学校・教師への忠誠」という論理のもと軍隊的な集団規律を維持してきたパラドックスも指摘された。「子どもを戦場に二度と送らせない」という動機から国家の干渉を排除しようとした結果、学校内の権威主義的文化が温存されてきた、という分析だ。冒頭で紹介した千葉の校長先生のブログも、イデオロギー的には進歩的かもしれないが中身は完全な軍国主義的発想だと古谷氏は指摘した。
抗議活動を「かっこ悪い」と嘲る「冷笑系」は問題の原因ではなく、こうした従順教育が生み出した症状に過ぎない。古谷氏は「1日では変わらない、非常に根の深い問題だ」と締めくくった。
この回の要点
- ISSP2014年調査でデモ参加・政治家接触・メディアへの意見表明がいずれも日本はほぼ0%と、主要国中で際立って低い政治参加率が数値で示された。
- 集団行動訓練は協調性の涵養と説明されているが起源は明治期の軍隊養成であり、「服従」を「協調性」と言い換えているに過ぎないと古谷氏は批判する。
- 平成不況による大学進学率の上昇が若者の従順化を加速させ、冷笑系はデモ離れの原因ではなくその結果として現れた現象に過ぎない。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。