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【金子勝】2026年10月23日 フランス財政危機と高市政権の危うさ
9月の消費者物価指数がエネルギー・生鮮食品除きで2.4%上昇するなか、経済学者の金子勝氏がフランスの財政危機と街頭デモを引き合いに、高市政権の積極財政路線が英国トラス政権の二の舞になるリスクを詳述した。財源なき5兆円の食料軽減税率・12兆円の成長投資・8.9兆円の防衛費に加え、年内終了するガソリン補助金・中東の原油リスク・トランプ政権からの対日要求強化という三重苦が重なりつつある構図を解説した回。
この回が答えていること
日本の消費者物価はなぜガソリン補助金があるのに2%を超えたのか?
ガソリン1リットルあたり50円という異例の補助金で表向きの数字を抑えてきたが、食料品と日用品の値上がりが続いており、補助金の恩恵が及ばない品目が2%超の上昇を牽引している。今後はユニクロ、美術館入場料、スマホ通信料なども値上がりし、さらに押し上げられる見通し。
フランスで国債利回りが急騰し抗議デモが広がっているのはなぜか?
コロナ期の大規模金融緩和で膨らんだマネーを今やファンドが発行済み国債の約半分を保有しており、利益・リスクに敏感なファンドが先物主導で国債を売り浴びせる構造になった。フランスでは156兆円規模の借り換え国債と、ルペン・メランション両陣営のバラマキ合戦が重なり、国債利回りが5%近くまで急騰している。
英国トラス政権の崩壊は高市政権にどう当てはまるか?
2022年9月、英国トラス政権が8兆円の大型減税を打ち出した途端にポンドと英国債が暴落し、45日で政権交代した。高市政権も財源を明示しないまま5兆円・12兆円・8.9兆円規模の支出を積み上げており、日本国債の格付けがすでにシングルAまで低下していることと合わせ、同じ狙い撃ちを受けうる状態にあると金子氏は指摘する。
ガソリン補助金が年内に終了した後、日本の物価はどうなるか?
補助金は10月上限35円・11月30円・12月25円と段階的に縮小され年内に終了する。赤字国債で手当てした1兆9000億円が切れ、電気・ガス補助金もすでに終了済みのところへ、イランをめぐる戦争やフーシ派によるイエメン沖海峡への攻撃リスクが重なれば、原油供給の急減でインフレがさらに悪化しかねない。
米中間選挙後にトランプ政権は日本にどんな要求を突きつけてくるか?
支持率31%に落ちたトランプ政権が中間選挙で上下両院を失っても、大統領は大統領令で外交・防衛の権限を維持する。欧州・カナダがアメリカ離れを強めるなか、在日米軍費用の増額や対米投資の追加拠出を日本に迫る可能性が高い。高市政権はトランプ政権への「抱きつき外交」を続けているため、要求を断れない構造に陥りやすいと金子氏はみる。
補助金で隠れていた物価の実態
9月の消費者物価上昇率は2.1%、エネルギーと生鮮食品を除くコア指数では2.4%に達した。ガソリン1リットルあたり50円という大規模補助金を出して表向きの数字を抑えてきたにもかかわらず、食料品と日用品が2%を超えた。ユニクロの値上げ、美術館の入場料倍増、スマホの通信料引き上げなど生活費の上昇は今後さらに広がる。金子氏は「これからガソリン補助金が切れていく。そうなると備蓄も減り、厳しい状態になる」と警告した。
フランス財政危機が示す国債暴落の構図
フランスでは高校生や労働組合による抗議デモが拡大している。背景にあるのは財政の行き詰まりだ。10年間で156兆円規模の借り換え国債を抱え、極右のルペンと左派ポピュリストのメランションが揃って大型バラマキを公約するなか、金融市場はフランス国債を狙い撃ちにし、国債利回りは5%近くまで急騰した。
この構造の根底にあるのが、コロナ期の大規模金融緩和で膨らんだ過剰マネーだ。かつて銀行や生命保険会社が安全資産として大量保有していた国債を、今や投資ファンドが発行済みの約半分を保有している。バーゼル規制(ビス規制)がギリシャやイタリアの財政危機以降、国債をリスク資産として評価するよう求めた結果だ。ファンドは利益とリスクに敏感なうえ先物市場で先行売りができるため、ひとたび信任が崩れると国債・通貨が連鎖的に売られる。
典型例が2022年9月の英国トラス政権だ。8兆円規模の大型減税を打ち出した途端、英ポンドと英国債が暴落し、政権はわずか45日で崩壊した。
高市政権の「財源なき積極財政」
金子氏は高市政権の政策がフランス・英国と同じ構図をたどる危険性を指摘する。食料品への軽減税率(実質ゼロ税率)で5兆円、成長投資で12兆円、過去最大の概算要求となった防衛費8.9兆円——いずれも財源が明示されないまま政策が進んでいる。日本国債の格付けはすでにシングルAまで低下しており、格付けがBになると投資不適格とみなされ売り圧力が一気に高まる。
円安防止のための為替介入も手詰まりだ。外国為替特別会計で保有する米国債を売って円買い介入するという手段は、米国債の価格がすでに下落局面にあるため追い打ちをかけるリスクがあり使いにくい。「集団はなくなっていく状況」と金子氏は述べた。
ガソリン補助金終了と中東リスクの連鎖
ガソリン補助金は10月に上限35円、11月30円、12月25円と段階的に縮小され年内に終了する。赤字国債で手当てした1兆9000億円が切れるとともに、電気・ガスの補助金もすでに終了済みだ。中東ではイランをめぐる戦争が続き、ホルムズ海峡に加え、フーシ派がサウジアラビアと交戦するイエメン沖の海峡でも通航リスクが高まっている。大規模攻撃が起きれば原油供給が急減しかねない。
トランプ政権・日米外交の綻び
米中間選挙でトランプ共和党が上下両院を失うシナリオも排除できず、支持率は31%まで低下している。ねじれ議会が生じてもトランプは大統領令で外交・防衛分野を主導し、欧州・カナダが距離を置くなか日本に在日米軍費用の増額や対米投資の拡大を迫ってくると金子氏はみる。すでに高市政権は80兆円規模の対米投資を表明しており、ソフトバンクやオラクルが参画するスターゲート計画など米国のAI・データセンター投資を支える形になっている。
外交面では田中均・元外務審議官が「外交の資格がない」と批判するほど相次いで失点しており、G7緊急会合を欠席した件も含め「ボコボコにやられている」状況だ。金子氏は「内閣人事局で首根っこを抑えられているため、官僚が言うべきことを言えなくなった。誰も制止しないまま万歳突撃に入っていく可能性が非常に高い」と締めくくった。
この回の要点
- ガソリン補助金があるにもかかわらず食料品・日用品が2%超の物価上昇を示しており、補助金終了後はさらなる生活費上昇が見込まれる
- フランス国債の5%近い利回り急騰と英国トラス政権の45日崩壊は、財源なき積極財政を続ける高市政権が直面しうるシナリオの先例として機能する
- 日本国債のシングルA格付け、為替介入手段の枯渇、中東リスク、対米追従外交が重なり、官僚が制止機能を失った状態で危機に突入しうると金子氏は警告する
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。