# 【関口靖彦(青木理)】2026年10月15日 ノーベル文学賞アン・カーソン著「赤の自伝」を紹介(書肆侃侃房から発売/「北は山、南は湖、西は道、東は川」/「銃ノ島」/「未来世界から来た男」) - Show: 大竹紳士交遊録 - 大竹まことゴールデンラジオ! - Published: 2026-10-15 - Canonical: https://podc.club/episode/254180252_349a379031ba.html - Audio: https://traffic.megaphone.fm/NCB6786294075.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 2026年のノーベル文学賞はカナダの詩人・古典学者アン・カーソンに決まり、日本では書肆侃侃房から刊行中の代表作「赤の自伝」に注目が集まっている。川学芸文化局の関口靖彦さんが、受賞作をはじめ昨年受賞のハンガリー作家の京都小説、今年の候補だったインド作家の新刊、さらに気軽に読めるSFショートショート集まで計4冊を紹介した。 ## この回が答えていること ### 2026年のノーベル文学賞を受賞したのは誰で、どんな作家か? カナダの詩人・古典学者アン・カーソン。古典学者として教壇に立ちながら詩人・作家としても活動する異色の存在で、スウェーデン・アカデミーは「遊び心に満ちた古典の伝統との対話が新たな形式を生み出した」と評した。 ### 受賞作「赤の自伝」を出版した書肆侃侃房とはどんな出版社か? 福岡の独立系出版社で、韓国女性作家シリーズや短歌・歌集に力を入れる個性的な版元。今回カーソンの作品を受賞前から刊行していたことで、業界内でその目利き力が改めて注目されている。 ### 昨年のノーベル文学賞受賞作「北は山、南は湖、西は道、東は川」はどんな内容と文体の作品か? ハンガリーのクラスナホルカイ・ラースローが日本滞在の経験をもとに書いた作品で、光源氏の孫が千年を超えて現代の京都をさまよう物語。本文が始まって数ページにわたって句点が一度も打たれない長文体が特徴で、意識の多層的な流れを表現している。早川epi文庫、1980円。 ### 今年の候補作アミタブ・ゴーシュ「銃ノ島」はどんなテーマの作品か? インドを舞台に17世紀と現在、伝説と現実が交錯する物語。帯には「インド神話×SF×ポストコロニアル」と書かれ、イギリス植民地支配の影響が現代に残るテーマを扱う。先月刊行されたばかりの角川書店版で税込2970円。候補止まりだったため今も入手可能。 ### フレドリック・ブラウン「未来世界から来た男」をあえて取り上げた理由は何か? 重厚な受賞作が続いたところで、文庫で気軽に読めるエンタメ海外文学として紹介。47編収録のショートショート集で、星新一のルーツともいえるアメリカの元祖的作家の作品。帯にノーベル化学賞受賞の北川進氏の推薦文があり、ノーベル賞つながりで選んできたとのこと。 ## 本文 ## 2026年ノーベル文学賞はカナダのアン・カーソンに 2026年のノーベル文学賞は、カナダの詩人・古典学者アン・カーソンが受賞した。古典学者として教壇に立ちながら詩人・作家としても活動する異色の存在だ。スウェーデン・アカデミーは「遊び心に満ちた古典の伝統との対話が、現代文学のための新たな形式を生み出した」と評した。 日本では毎回、日本人作家が取れるかどうかに注目が集まり、受賞が外れると話題が終わりがちだが、海外の受賞者は実績豊かな作家が並ぶ。今回をきっかけに手に取る価値は十分にある、と関口さんは強調した。 ## 代表作「赤の自伝」と書肆侃侃房 カーソンの代表作「赤の自伝」は、日本では福岡の独立系出版社・書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)から刊行されている。内容は、古代ギリシャの詩人ステーシコロスが描いた神話に登場する怪物と英雄を軸に、現代に至るロードノベルと怪物・英雄の濃密な物語を組み合わせたもの。古代と現代、詩と小説という形式そのものがミックスされており、いわゆるエンタメとは対極にある前衛的・実験的な作品だ。 書肆侃侃房は、韓国女性作家シリーズや短歌・歌集に力を入れる個性的な版元として業界で知られている。受賞前からカーソンの作品を刊行していたことで、その目利き力が改めて注目されている。今回をきっかけに同社の他の刊行物にも目を向けると面白い本が見つかる、とすすめていた。 ## 昨年の受賞作「北は山、南は湖、西は道、東は川」 昨年(2025年)のノーベル文学賞は、ハンガリーの作家クラスナホルカイ・ラースローが受賞した。紹介された「北は山、南は湖、西は道、東は川」(早川epi文庫、1980円)は、光源氏の孫が千年の時を超えて現代の京都をさまようという物語だ。ハンガリー人作家が書いた日本を舞台にした作品で、著者は文化交流の一環として日本に長期滞在した経験をもとに執筆した。 この作品の最大の特徴は文体にある。本文が始まって2〜3ページ、場合によっては4ページ進んでも句点が一度もつかない、極端に長い文章が続く。人間の意識は一直線ではなく、会話しながら窓の外の空が目に入ったり、橋を渡れば欄干の木のテカリが気になったりする——その複数の意識の流れを区切らずに書き続けるスタイルだ。読むと「自分が普段いかに多くの感覚情報をオミットしているか」に気づかせてくれる面白さがあるという。受賞を機に文庫化されて入手しやすくなった。 ## 今年の候補作「銃ノ島」と気軽に読めるショートショート 今年のノーベル文学賞候補の一人だったインドの作家アミタブ・ゴーシュの「銃ノ島」(角川、税込2970円)も紹介された。帯には「インド神話×SF×ポストコロニアル」と書かれており、17世紀と現在、伝説と現実が交錯する物語だ。ポストコロニアルとはイギリスによるインド植民地支配のような帝国主義の「後」に残る影響を指す。先月出たばかりの新刊で、もし受賞していたら品切れ必至だったが、候補止まりのため今も手に入る状態だ。 重厚な作品が続いたところで、最後に紹介されたのがフレドリック・ブラウンの「未来世界から来た男」(草思社SF文庫、税別1200円)。47編を収めたショートショート集で、奇抜なアイデアと気の利いたオチが持ち味のアメリカ作家の作品だ。日本の星新一のルーツにあたる存在とも言われる。帯にはノーベル化学賞受賞の北川進氏の推薦文が載っており、「ノーベル賞つながり」で選んで持参したとのこと。小学生でも楽しめるが大人が読んでも刺さる——そんな普遍的なアイデアの面白さが味わえる入門としての海外文学として紹介された。 ## この回の要点 - 2026年ノーベル文学賞受賞のアン・カーソン「赤の自伝」は書肆侃侃房から入手可能で、古代ギリシャ神話と現代ロードノベルを融合した前衛的な作品。 - 昨年受賞のクラスナホルカイ「北は山、南は湖、西は道、東は川」は、数ページ句点なしの長文体で人間の多層的意識を表現した京都小説。早川epi文庫で1980円。 - ノーベル文学賞は難解で重厚な作品ばかりでなく、フレドリック・ブラウンのような気軽に読めるショートショート集を入口に海外文学に触れる方法もある。