# 【三牧聖子】2026年10月19日 「アメリカ中間選挙」について - Show: 大竹メインディッシュ - 大竹まことゴールデンラジオ! - Published: 2026-10-19 - Canonical: https://podc.club/episode/254179829_f03a9e223fe4.html - Audio: https://traffic.megaphone.fm/NCB3936238884.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 国際政治学者の三牧聖子・同志社大学大学院教授が、2週間後に迫ったアメリカ中間選挙(2026年11月初頭)の行方を解説した。半年以上続くイラン戦争の長期化、高騰する燃料・物価、トランプ大統領の個人資産急増への国民の怒りを背景に、民主党が下院多数を奪還する公算が大きいと指摘。日本の対中関係悪化とアメリカへの過度な依存リスクにも警鐘を鳴らした。 ## この回が答えていること ### トランプ政権の支持率はなぜこれほど落ちているのか? 「平和の大統領」を掲げて当選したトランプ大統領がイラン戦争を始め、半年以上終結できないでいる。物価高を公約に掲げながら関税戦争・エネルギー高騰を招き、その一方でトランプ自身の個人資産は約2,200億円増加しており、国民の怒りと不満が支持率を押し下げている。 ### 中間選挙で民主党が優勢とされる理由は何か? 下院は全議席改選で民意が反映されやすく、イラン戦争批判・トランプ個人資産増大疑惑・娘婿クシュナー氏の利益相反問題が民主党支持者の投票意欲を高めている。イーロン・マスク氏の巨額献金もかえって無党派層の危機感を刺激し、民主党票を押し上げる可能性があると三牧氏は指摘する。 ### イラン戦争は日本を含む同盟国にどんな影響を与えているか? ホルムズ海峡の封鎖状態が続き、日本のエネルギー価格に直撃している。加えて日本は関税圧力に屈する形で5,000億ドル超(円安換算で80兆円超)の対米投資を約束させられており、トランプ政権の同盟国への強硬姿勢が経済的な打撃をもたらしている。 ### アメリカで「民主社会主義」への支持が広がっているのはなぜか? 上位1割が富の7割を保有するという極端な格差社会が背景にある。「家賃凍結」「公営スーパーによる物価対策」「富裕層への課税強化」といった具体的な政策は、共和党支持者でも多数が賛成するという状況になっており、若い世代を中心に民主社会主義的な考えへの共感が広がっている。 ### 日本の対中関係の悪化は、日本の安全保障にどんなリスクをもたらすか? 高市氏の国会発言を機に日中関係はここ数年で最悪水準となり、APEC での首脳会談の見通しも立たない。一方トランプ大統領は習近平氏との関係を強調し、米中が接近しつつある。対話の糸口を失ったまま防衛費を増額すれば、防衛力を高めながら「危険度も増す」悪循環に陥りかねないと三牧氏は警告する。 ## 本文 ## イラン戦争の長期化と崩れた「平和の大統領」像 トランプ大統領は就任時に「平和の大統領になる」と宣言し、ベネズエラへの軍事行動を1日で終わらせた「成功体験」を持っていた。しかしイランは地理的規模も国家体制も全く異なり、戦争は半年以上を経ても終結できていない。開戦当初——ハメネイ師を殺害した時点——でも支持率は約40%にとどまり、「戦争に疲れてトランプを選んだのにまた戦争になった」という国民の失望は根深い。 トランプ政権自身がイラク戦争を「大量破壊兵器という口実で始めた誤った戦争」と批判してきた経緯があるだけに、今回の矛盾は大きい。死者数を過小発表していたとの報道もあり、戦場での犠牲と向き合わない姿勢への批判も高まっている。さらにイランの核開発意欲は、交渉中に攻撃されたという事実によってむしろ固まっており、当初の目的が達成されていない状況だ。 ## 中間選挙の構図――民主党が下院奪還を狙う 放送時点から約2週間後に迫った中間選挙では、全議席改選の下院で民主党が多数派を奪還する公算が大きいとされる。上院(3分の1改選)の奪還はハードルが高いが、接戦州に有力候補が立ち、民主党が上院多数も視野に入れている。 民主党支持者の投票モチベーションを高める要因は三つある。第一にイラン戦争批判、第二にトランプ大統領の個人資産急増(就任後に約2,200億円増加)への疑惑、第三に娘婿クシュナー氏が中東外交の和平特使を担いながら同地域でビジネスを展開している利益相反問題だ。下院で野党が多数を奪還すれば調査権が発動され、この2年間の政治の腐敗を明らかにする弾劾手続きへの道も開かれる(最終的な罷免には上院の3分の2が必要)。 共和党側はゲリマンダー(選挙区割り操作)で本来民主党に転びうる約10議席を上乗せし、イーロン・マスク氏が史上最高額とも言われる政治資金を投入している。ただし三牧氏は「マスク氏の登場がかえって無党派層に危機感を与え、民主党票を増やす可能性もある」と指摘する。 ## 日本・カナダに広がる対米依存低減の動き ホルムズ海峡の封鎖状態は日本のエネルギー価格に直撃し、日本はさらに関税圧力に屈する形で5,000億ドル超(円安換算で80兆円超)の対米投資を約束させられた。こうした状況を受け、カナダはアメリカとの依存関係を維持しつつ中国との関係改善に動き、EUへの準加盟も模索しており、「全方位外交で対米依存を減らす」のが今や同盟国共通の潮流だと三牧氏は述べる。 一方、日本だけは例外的な状況にある。高市氏の国会発言を機に日中関係はここ数年で最悪水準となり、APEC での首脳会談の見通しすら立たない。トランプ大統領は習近平氏との個人的な親密さを強調し、台湾問題だけは発言を慎む一貫した姿勢を保っている。米中が接近する中で日本が対話の糸口を失えば、防衛費を増額して防衛力を高めながら「危険度も増す」悪循環に陥りかねないと三牧氏は警告した。 ## アメリカで台頭する「民主社会主義」 冷戦期に「敵の体制」とされてきた社会主義への言及がアメリカで増えている背景には、上位1割が富の7割を保有するという極端な格差がある。「家賃凍結」「公営スーパーによる物価対策」「富裕層への課税強化」といった政策は、共和党支持者でも多数が賛成するという調査もある。 85歳のバーニー・サンダース上院議員は「オリガーキーと戦え」(地平社、税込1,980円)ツアーで全米の民主社会主義系候補を応援して回っており、三牧氏は「数十年孤独に掲げてきた考えが今回の中間選挙で民主党の主流になるかもしれない」と評した。AI データセンターが地元の水・電力を圧迫し一部企業だけが利益を得るという不満も選挙の争点に浮上しており、富の格差への怒りが選挙の大きな軸となっている。 ## この回の要点 - トランプ大統領はイラン戦争長期化・物価高悪化・個人資産急増の三重の批判を受け、支持率が急落。下院では民主党が多数奪還に王手をかけている。 - カナダなど同盟国が全方位外交で対米依存を減らす中、日中関係が最悪水準の日本だけが例外となっており、防衛費増額が逆効果になるリスクを三牧氏は指摘した。 - 上位1割が富の7割を持つ格差社会への怒りを背景に、バーニー・サンダース的な民主社会主義的政策がアメリカの有権者に広く受け入れられ始めている。