「VIVANTと実際の自衛隊活動 読み比べ」スクラップ・タイムス【2026.10.24 OA】
TBSドラマ「VIVANT」シーズン2が描く自衛隊秘密部隊「別班」と、2026年7月に熊本日日新聞がスクープした陸上自衛隊情報部隊による民間人の思想・性的指向調査問題を並べて読み比べる。フィクションが煽る国家主義的イメージと、実態は「スパイごっこ」と元幹部が評するほど脱力的でありながら危険な情報活動のギャップを、その後の各紙追跡報道も交えて検証する。
この回が答えていること
VIVANTシーズン2が国家主義的だと指摘されているのはなぜか?
別班スクープをした元共同通信の石井暁さんが懸念を表明している。シーズン2では仮想国だった敵が中国に変わり、拷問シーンで「日本が怒りをためて反撃する」構造が強まった。かつて中国に「抗日ドラマ」があったように、国力が弱った日本がドラマで鬱憤を晴らす構図に見えると鹿島さんは分析する。
熊本日日新聞の2026年7月スクープはどんな内容だったのか?
陸上自衛隊の「現地情報隊」が、本来は海外派遣先の情報収集が任務なのに、国内の研究者や民間人について思想信条・愛国心・性的指向・異性関係など41項目に及ぶデータ(BSD)を記録する仕組みがあったことが判明した。
実際の自衛隊情報部隊の活動実態はドラマとどう違うのか?
毎日新聞に登場した元幹部は「スパイの真似事、情報収集ごっこ」と評した。ノルマをこなすために協力者に直接会わず旅行ガイド「地球の歩き方」やネット情報だけで報告書を作成した隊員や、図書館を往復しただけで「任務に当たった」と報告した隊員もいたという。
毎日新聞や朝日新聞などはその後どんな角度でこの問題を追ったのか?
沖縄タイムス(8月10日)は民間人への接触活動を隊内で「営業」と呼んでいたと報道。朝日新聞(9月)は信頼関係を築いた相手の私生活まで記録することへの元隊員の葛藤を証言で描いた。毎日新聞(10月14日)は「スパイごっこ」という元幹部の証言でその脱力的な実態を伝えた。
毎日新聞記者・遠藤浩二のX投稿はなぜ記者論争に発展したのか?
遠藤記者がX上で記者の仕事や幼稚舎通いの苦労など自身の哲学を投稿したところ、同業者を中心に論争に発展した。宮崎さんは情報公開請求や記者会見など公開情報の取材を軽んじているように読めるという懸念を自分のXに書いたと述べ、「どちらも大事」と主張した。
VIVANTシーズン2と「別班」——ドラマの背景
堺雅人が演じる主人公が自衛隊の秘密組織「別班」の一員として世界を舞台にスパイ活動を繰り広げるTBSドラマ「VIVANT」のシーズン2が話題だ。別班とは実在する可能性がある組織で、元共同通信記者の石井暁さんが2013年にその存在をスクープした。政府は現在も存在を否定しているが、石井さんは『別班の正体』という書籍を刊行している。ドラマの設定通り、首相や防衛大臣にも存在を知らせていないとされる。
シーズン2への懸念:国家主義的演出とLGBT描写
石井さん自身がシーズン2に懸念を表明している。シーズン1では「バルカ共和国」という仮想国が敵だったのに、シーズン2では中国を敵として演出する場面が目立ち、戦前の軍隊を連想させる菊の紋章なども登場。「国家主義的な色合いが強まっている」と感じているという。スパイ防止法制定の動きがある中、「国を守るためなら非合法な活動も許される」というイメージが広がることへの危惧も示した。
鹿島さんはシーズン2を全部見た上で、中国が日本の自衛隊員や公安職員を拷問するシーン(指を切り落とすなど)が強烈だと指摘。「この野郎」と視聴者が怒りをためて日本の反撃を応援する構造は、かつて日本を敵として描く中国の「抗日ドラマ」に似ていると分析した。「国力が弱った日本がドラマでうさを晴らす構図を制作者が嗅ぎ取ってヒットした可能性がある」と述べた。
LGBT描写についても問題提起した。タイのスパイとして登場するゲイのキャラクターが笑いのネタに使われており、ターゲットに好かれている人物に対して「お前はストレートか」と性的指向を公衆の前で確認するシーンがある。これはアウティングにあたるとして、「古くてやばい」と批判した。
熊本日日新聞スクープ:自衛隊が民間人の思想・性的指向を記録
2026年7月22日、熊本日日新聞が「陸上自衛隊情報部隊が愛国心など調査か」と報じた。陸上自衛隊の「現地情報隊」は本来、海外派遣時に現地情報を収集して隊員の安全を守るのが任務だ。ところがこの組織が、国内の研究者や民間人の思想信条・愛国心・性的指向・異性関係まで記録するデータベース(BSD)を構築し、その項目が41に及んでいたことが判明した。
宮崎さんはこのスクープをきっかけに熊本日日新聞のデジタル版を購読し始めたと明かした。「被災地への応援であり、スクープを取った記者への応援」と述べた。
各紙の追跡報道——「スパイごっこ」の脱力する実態
同スクープの後、各紙が異なる角度から追跡した。8月10日の沖縄タイムスは、民間人への接触活動を内部で「営業」と呼んでいたことを報じた。9月の朝日新聞は元隊員の証言をもとに、信頼関係を築いた相手の私生活まで記録することへの葛藤を描いた。
10月14日の毎日新聞は「スパイの真似事、情報収集ごっこ」という元幹部の証言で実態を伝えた。ノルマをこなすために協力者に直接会わず旅行ガイド「地球の歩き方」やネット情報だけで報告書を書いた隊員がいたこと、図書館を往復しただけで任務に当たったと報告した隊員がいたことも明かされた。遠藤記者はXで、忍者村を訪れてレポートを書いた隊員がいたことも紹介したという。
鹿島さんはこの「脱力感」に落としてはいけないと強調した。活動がどんなにずさんでも、問題の深刻さは変わらない。なぜ民間人の性的指向や思想信条を記録する仕組みが作られたのか。「営業ごっこ」「スパイごっこ」だからこそ、でっち上げや冤罪につながりやすいと指摘した。大川原化工機事件(公安警察による冤罪事件)との共通項として、「目的を見失ったまま重大な権力を行使する」危うさを遠藤記者が一貫して問うていると両者は見ている。
遠藤記者のX投稿と記者論争
毎日新聞の遠藤浩二記者はXで記者の仕事論や自身の体験談を投稿し、フォロワーが増えて注目を集めている。同業記者を中心に論争にもなった。
宮崎さんは遠藤記者の仕事を尊敬しつつも、情報公開請求や記者会見など公開情報の取材が「こちらの方が尊い」という形で軽んじられているように読める書き方には違和感を覚え、自身のXにも意見を書いたと述べた。「取材源に取り込まれないようにすることも、記者会見で正面から問うことも、どちらも大事」という立場だ。遠藤記者は来月この番組にゲスト出演する予定で、記者論についても話を聞く予定だという。
この回の要点
- VIVANTシーズン2は中国を敵とする国家主義的演出が強まり、別班スクープをした石井暁さん自身が懸念を表明している。
- 熊本日日新聞が報じた自衛隊情報部隊の民間人監視(思想・性的指向など41項目)は実態が「スパイごっこ」だからこそ冤罪の温床になりうると鹿島さんは警告する。
- 各紙がスクープを「なぞる」のではなく異なる問題意識で追跡報道していることを両者は評価し、遠藤記者の来月出演に向け記者論の議論をさらに深めていく姿勢を示した。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。