#35 「ロフトプラスワンの幽霊?」
ポッドキャスト「信頼できない語り手」の話者の一人が、slenderie recordのコンサート参戦をきっかけに、藤井隆との二つのコロナ禍秘話を初公開する。観客ゼロのロフトプラスワン公演に一人だけ招かれた夜にごまっとうの「Shall We Love?」を歌った顛末から、哲学者・鷲田清一の「人生をあみだくじとして捉えればミドルエイジクライシスは消える」という議論まで話が広がる回。
この回が答えていること
藤井隆が開演直前に自ら物販に立つ姿から話者が感じたこととは?
藤井さんは開演直前まで自ら物販に立ち、終演後も同じ場所に戻る「物販パパ」として知られる。最小のカロリーで最大の利益を得ようとする姿勢とは対極の姿に、「ファンはこういうところで作られるんだ」と実感したと語った。
藤井隆が話者に送ってきた「謝罪メッセージ」とはどんな内容だったのか?
別番組の収録スタジオで、ゲストが好きな作家として話者の名前を挙げた際に周囲が「誰?」という雰囲気になった。藤井さんは知っていたのに咄嗟に言えなかったことを、放送されて偶然本人が見た場合に傷つくかもしれないと案じ、万が一が二重に重なる超低確率でも不安を排除したくて謝罪の連絡を送ってきた。
コロナ禍のロフトプラスワン公演で話者はなぜ「幽霊」に間違えられかけたのか?
コロナ禍で椿鬼奴・レイザーラモンRGとの恒例ユニットイベントが初の無観客開催となった際、藤井さんから「歌いやすいよう一人来てほしい」と招待された。会場の壁際にうちわを持って一人で立っていたため、事情を知らない二人にはロフトプラスワンに憑く幽霊と思われたかもしれないと話者は笑って語った。
今回のコンサートで藤井隆が取ったコーラス隊方式の演出とはどんなものか?
藤井さんはゲストを紹介した後もステージを降りず、スタンドマイクが並ぶコーラス隊の一員として加わり続けた。後から登場したゲストも順次コーラス隊に合流する構成で、田中さん(ここり子)が最初からコーラス隊にいたことに途中まで気づかないほど自然な溶け込み方だった。
哲学者・鷲田清一はミドルエイジクライシスをどう捉え直しているか?
人生を始点と終点のある直線として捉えるから40代に「ミドル」という概念が生じて辛くなると鷲田さんは指摘する。始点・終点を取り外し、軸ごとがらりと変わるあみだくじのように考え直せば、ミドルエイジクライシスという発想自体が消えるという。
ラインキューブ渋谷で感じた「物販パパ」のホスピタリティ
話者の一人は先週、ラインキューブ渋谷(かつての渋谷公会堂、C.C.レモンホール)で行われたslenderie recordのファミリーコンサートに足を運んだ。同レーベルは今年7月から9月にかけて全国11都市でツアーを展開しており、渋谷公演がその締めくくり。ファンクラブで当選し、1階前方の好席で観覧した。
グッズとして通常のTシャツではなくボタンダウンシャツが販売されており、普段着としても使えると判断して購入。さらに印象的だったのが、藤井さんが開演直前まで自ら物販に立ち、終演後も同じ場所に戻る「物販パパ」の姿だ。リハーサルも喉のケアも必要な直前に大きな声で接客するその姿勢に、「ファンはこういうところで作られると思った」と話者は語った。
秘話①——超低確率の万が一を想定した謝罪メッセージ
話者は藤井さんをロールモデルとして仰ぎ、かつて番組共演を機に連絡先を交換した間柄だ。あるとき別番組の収録スタジオで、ゲストが好きな作家として話者の名前を挙げた。10数人いるスタジオに藤井さんもいたが、周囲が「誰?」という雰囲気になった際、知っているのに咄嗟に声を上げることができなかったという。
後日藤井さんから届いたのは、「もし放送されて、かつ偶然あなたが見ていたら傷つくのではないかと思ってご連絡しました」という謝罪メッセージだった。万が一が二重に重なる超低確率の状況を想定してわざわざ連絡する細やかさに、話者は「人としての二択を間違えない人がいる」と深く感じたと振り返った。
秘話②——ロフトプラスワンの幽霊
コロナ禍、藤井さんが椿鬼奴・レイザーラモンRGと組む恒例ユニットイベントが初めて無観客で開催されることになった。ロフトプラスワンでお酒やご飯を楽しみながら大勢で盛り上がるホームなイベントを、カメラだけ前に行う不安を打ち明けながら、藤井さんは話者一人を「歌いやすいように来てほしい」と招待した。
話者は会場の壁際にうちわを持って一人で立ち続けた。椿鬼奴さんやRGさんは事情をよく知らず、ロフトプラスワンに宿る幽霊か、確認してはいけない存在と思われたかもしれないと話者は笑う。終演後の小さな打ち上げでは3人に続いて話者も一曲歌うことになり、ごまっとうの「Shall We Love?」を選択。冒頭からいきなり全力で盛り上がれる曲構成が功を奏し、場を下げずに締めくくることができたと語った。
今回のライブ演出と「また歌ってほしい人」
今回のコンサートで話者が「発明だ」と絶賛したのがコーラス隊方式の演出。藤井さんはゲストを紹介した後もステージを降りず、スタンドマイクが並ぶコーラス隊の一員として合流し続けた。登場したゲストも順次コーラス隊に加わる構成で、和久井映見さんや早見優さんが歌う場面でも藤井さんはずっとステージ上にいた。途中まで田中さん(ここり子)が最初からコーラス隊にいたことに気づかないほど自然に溶け込んでいた。
この光景を見て話者は、10年以上前から頭の中で温めてきた「ある人に歌ってほしい3曲」を思い出したと語る。その人が歌えばファンが喜ぶと確信できる曲がすでに3曲あり、フルアルバムには足りないのでEP規模かと考え続けてきたという。藤井さんのやり方はそのビジョンの具現化に見え、「ますますやりたいと思った」と語った。
人生をあみだくじとして捉える——鷲田清一の視点
最後の話題は、哲学者・鷲田清一と臨床心理士・東畑開人の対談本から。鷲田さんは大阪大学の学長を務めた経験も持つ哲学者で、ミドルエイジクライシスをテーマにした対談の中でこう指摘する。「人生を始点と終点のある直線として捉えるから、40代に『ミドル』という概念が生まれて辛くなる」。始点・終点を取り外し、軸ごとがらりと変わっていくあみだくじのように人生を捉え直せば、ミドルエイジクライシスという発想自体が消えるという。話者はこの視点を「すごくなるほどと思った」と紹介して回を締めくくった。
この回の要点
- 藤井隆は超低確率の「万が一」でも相手の気持ちを慮って謝罪の連絡を入れるほどの細やかさを持つアーティストとして語られた。
- コロナ禍のロフトプラスワン無観客公演に一人招かれた体験は、特別扱いを自粛するファン文化の中で長らく口外できなかった異例の出来事だった。
- 鷲田清一の「人生はあみだくじ=始点・終点なし」という捉え方は、ミドルエイジクライシスの根本を問い直す視点として紹介された。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。