# # 【すずかん先生(鈴木寛)× 白石慶次】AI時代、大人は何を学ぶべきか?「大人の教育改革」 - Show: 学校では教えてくれない”見えない力”の授業〜「大人の非認知能力」〜 - Published: 2026-10-12 - Canonical: https://podc.club/episode/1854057425_46168472b4ef.html - Audio: https://rss.art19.com/episodes/8c030f90-87b3-49e2-ac5e-29400fe79b80.mp3?rss_browser=BAhJIgxNb3ppbGxhBjoGRVQ%3D--4f04cd103bfdd3e94cbbb356ead53321a4d63e94 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 元文部科学副大臣・東京大学教授の鈴木寛(すずかん)先生を迎え、「AIが東大理科三類の受験生最高点を上回った」という現実から説き起こし、なぜ日本の教育を「工業化モデル」から脱却させる必要があるのかを論じる。30年前から温めてきた「卒近代」思想、OECDの最新国際学力調査で日本の15歳が全科目1位を獲得した背景、そして「ビヨンドGDP」という新しい豊かさの指標まで、教育改革の全体像を俯瞰する。 ## この回が答えていること ### AIは人間の知的能力をどこまで超えているのか? 今年春の東京大学理科三類二次試験で、AIが受験生の最高点を上回った。共通テストではAIは満点を取る。「テストで測れる認知能力はすでにAIに越された」という時代が到来した。 ### 日本の15歳の学力は現在どのくらい優秀で、その理由は何か? 2025年実施のOECD国際学力調査(PISA)で数学・理科・読解力・環境リテラシーの全科目で世界1位。背景には教員の努力と年間延べ1,100万人(人口の約10%)に上る学校ボランティアの存在がある。 ### 「卒近代」とはどういう思想で、なぜ今それが必要なのか? 明治維新以来の「工業化=GDP最大化」路線を感謝しながら卒業し、人と人の関係性・人と自然の調和を重視する時代へ移行する思想。AIによる仕事の代替と気候変動・エネルギー問題が「限界」を示していると鈴木先生は1995年ごろから主張してきた。 ### 吉田松陰の松下村塾は鈴木先生の教育観にどう影響したか? 1993〜95年に山口県へ出向し松下村塾に20回通った(人生累計60回超)。8畳と10畳の二間・92名・2年間という規模で日本近代化の礎を作った松陰の実績から「若者の可能性を引き出せば社会が変わる」という確信を得て、自身のゼミで5,000人以上を育成してきた。 ### GDPだけを目標にする社会の何が問題で、代わりにどんな指標が提唱されているか? 2009年フランスのサルコジ大統領がノーベル経済学賞受賞者を集め「ビヨンドGDP」を提唱。OECDが策定したベターライフインデックスは①経済(生産)資本②人的資本③自然資本④社会関係資本の4指標で豊かさを測る。日本は経済資本では成功したが幸福度は国際的に低く、「GDPだけを目標にする時代は終わった」と鈴木先生は言う。 ## 本文 ## AIが東大合格者の最高点を超えた 今年春、東京大学理科三類(医学部最上位)の二次試験で、AIが受験生の最高点を上回った。満点ではなく、教授には届かない。しかし鈴木先生は「この事態は予測していた」と言う。共通テスト(旧センター試験)ではすでにAIが満点を取る。「テストで測れる認知能力はAIにすでに越された」というのが現状認識であり、だからこそ非認知能力を磨くことが急務だとして、総合型選抜(旧AO入試)を全国の国立大学に普及させるなどの教育改革を推進してきた。 ## 日本の15歳は全科目で世界1位 2025年実施のOECD国際学力調査(PISA)で、日本の15歳は数学・理科・読解力の3科目すべてに加え、新設された「環境リテラシー」でも1位を獲得。前回(2022年調査)は読解力が2位だったが、今回は全科目金メダルとなった。背景には小中学校教員の努力に加え、年間延べ1,100万人(人口の約10%)に上る学校ボランティアの存在がある。花壇の手入れや通学路支援から教科指導の補助・部活支援まで多岐にわたり、教員が本来の教育に集中できる環境を支えている。 ## 「卒近代」──30年前から温めた問題提起 2026年1月出版の著書『卒近代宣言』のアイデアは1995年ごろから育んできたものだ。「近代化」とは明治維新以降の工業化・GDP最大化路線を指す。日本はその優等生で、1992〜93年には一人当たりGDPが主要国トップクラスに達した。しかし、その教育が育てていたのは「マニュアルを正確に・高速に・文句を言わず再現できる工場労働者」だった。新幹線の定時運行や製品品質の高さはその成果だが、同じ能力をAIとロボットが代替できる今、人間はその仕事から「卒業」しなければならない。気候変動や原発事故が示すエネルギー問題も工業文明の限界を示す。「近代を否定するのではなく、感謝しながら卒業する」のが「卒近代」の核心だ。 ## 松下村塾が示した教育の可能性 鈴木先生は1993〜95年に山口県へ出向し、吉田松陰の松下村塾に計20回通った(人生累計60回超)。8畳と10畳の二間、教え子92名、わずか2年間の教育期間で、松陰は日本近代化の礎を作り、日露戦争の勝利などを通じてアジア・アフリカ諸国にまで影響を与えた。「一人の教育者が若者の可能性を引き出せば社会が変わる」という確信を得た鈴木先生は、自身のゼミで5,000人以上の「卒近代型リーダー」を育ててきた。 ## ビヨンドGDPと幸福度の課題 2009年、フランスのサルコジ大統領がノーベル経済学賞受賞者を集め「ビヨンドGDP」を提唱(サルコジレポート)。OECDはこれを受けて「ベターライフインデックス」を策定し、①経済(生産)資本②人的資本③自然資本④社会関係資本の4指標で豊かさを測る枠組みを示した。日本はGDPでは成功したが幸福度は国際的に低い順位に留まる。人口減少も重なり、GDPランキングは2位から下落が続く。「GDPだけを目標にする時代は終わった」という問題提起は「卒近代」と軌を一にする。 ## この回の要点 - 東大理科三類二次試験でAIが受験生最高点を超えた。認知能力の競争はすでに人間の負けが決まっており、非認知能力の育成が急務になっている。 - PISA2025で日本の15歳は全科目世界1位。その背景には年間延べ1,100万人の学校ボランティアが支える「社会総がかりの教育」がある。 - 鈴木寛先生が30年前から提唱する「卒近代」は、工業化・GDP一辺倒の価値観を感謝しながら卒業し、人間関係・自然・幸福度を重視する社会への移行を訴える思想だ。