# (カロリーオフ)外国勢力は本当に選挙を動かすのか問題 - Show: ニュースを深く面白く 報談 【HOU-DAN】 ホウダン - Published: 2026-10-25 - Canonical: https://podc.club/episode/1822960480_5df822edb254.html - Audio: https://pdst.fm/e/traffic.megaphone.fm/TASC5167193255.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 外国勢力は選挙介入をしているのか、しているとして本当に民意を動かせるのか。朝日新聞記者の船越隆が、2016年米大統領選でのロシア工作の実態と日本政府のインテリジェンス強化の動きを具体的に解説した。「介入工作の存在」と「選挙結果への影響の証明」は別問題であり、中国の選挙介入能力への過剰な警戒にも冷静な視点を示している。 ## この回が答えていること ### 外国勢力による選挙介入は実際に起きているのか? 「介入工作があった」という報告はあるが、それが選挙結果を動かしたという証拠はアメリカでも日本でも公式に示されていない。現状は「活動の存在確認」にとどまっている。 ### 2016年米大統領選でロシアはどのような工作を行ったのか? SNSへの大量の偽アカウント作成、人種差別的な偽情報の拡散、選挙システムへの侵入試みなどが報告書に記載された。ロシアはトランプ勝利を後押しする意図で動いたとされるが、結果への影響は証明されていない。 ### 日本は外国からの選挙介入にどう対応しているのか? 国会答弁で政府が影響工作の標的になっているとの認識を示し、2026年9月からインテリジェンス強化の有識者会議が始まった。具体的事例の公開は限定的で、通信の秘密との兼ね合いも課題として残る。 ### 中国の選挙介入能力はどの程度高く、どこまで警戒すべきか? 中国は選挙制度を持たないため、選挙戦で世論がどう動くかという体感的知識に乏しい。船越さんが中国在住時に政府関係者から日本の選挙情勢を逆に聞かれる場面が多く、過剰な警戒は不要との見方を示している。 ### SNS上の偽情報に個人はどう向き合えばよいのか? 衝撃的・センセーショナルな情報ほど一度立ち止まって真偽を疑うことが重要。確認前のリツイートや共有は偽情報の拡散に加担するリスクがある。 ## 本文 ## 「介入はある」しかし「結果を動かした」証拠はない リスナーから寄せられた「外国勢力による選挙介入は本当に存在するのか」という問いに、船越さんは「歯切れよく言いにくい話」と前置きした。「明らかな選挙介入です」と断言できる事例がニュースになったことは実はない、というのが出発点だ。 ただし「活動があった」という報告書は存在する。情報機関が充実し、インターネットを軍事技術として生み出したアメリカが最もデータが豊富で、船越さんはまずアメリカの事例から解説した。 ## 2016年米大統領選でのロシア工作と重要な留保 トランプ氏が初当選した2016年の大統領選では、ロシアがトランプ勝利を後押しする意図で工作を行ったとされる。具体的な手口として報告書に記載されたのは、SNSへの大量偽アカウントの作成、政府広告に見せかけた偽広告の掲出、人種差別的な偽情報の拡散、そして選挙システム自体への侵入試みだ。 しかし重要な留保がある。「それによって選挙結果が動いた」という証拠や報告書は一つも出ていない。2024年の大統領選ではFBIがイランからの攻撃を報告しているが、同様に「活動の存在確認」にとどまっている。 ## 日本の現状とインテリジェンス強化の課題 日本では国会答弁で政府が「我が国も影響工作の対象になっている」との認識を示し、2026年9月からインテリジェンス強化の有識者会議が始まった。直近の衆院選での事例も会議内で紹介されているという。 ただし具体的な情報の公開は乏しい。「SNS上で多数のアカウントが出来上がり政府政策が批判された」「外国と疑われる不審アカウントを把握している」という記述は報道ベースで存在するが、「これが外国からの選挙介入だ」とピンポイントで特定された情報には、船越さん自身まだ触れたことがないと言う。 茨城県で発見された大量のスマートフォンを並べて特定アカウントの表示回数を操作する「スマートフォン農場」の報道もあり、情報を物量で動かせること自体は事実だ。しかしそれが外国勢力の組織的介入かどうかは別問題である。 インテリジェンス強化を進める上での懸念も船越さんは示す。サイバー空間の監視はメールや電話といった通信の秘密(憲法保障)にどこまで政府が関与するかという問題に直結する。国民への丁寧な説明と納得できるルール設定が不可欠だと訴えた。 ## 中国への「過剰な警戒」を疑う 「中国はAIやネットに強いから選挙介入も巧みなはず」という印象が広くある。しかし船越さんは中国在住経験を踏まえ、選挙介入に関しては冷静な見方を示す。 根本的な理由は、中国が選挙制度を持たないことだ。選挙戦で世論がどう動くか、どの情報がどう投票行動に影響するかという体感が政府関係者にも一般市民にも備わっていない。船越さんは中国在住中に政府関係者から「日本の選挙、今どちらが優勢ですか」と繰り返し聞かれる経験をしたという。「日本の新聞を読めば分かる」と答えても「よく分からない」と返ってきた。 高市氏を例に挙げると、SNS上では高市氏へのポジティブな投稿が目立つが、中国の立場から見れば高市氏は警戒対象であり、わざわざ後押しする合理的理由がない。「何でも中国が背後にいる」とする見方は安易だと指摘する。ただし「だから備えなくていい」とはならず、政府のインテリジェンス強化の必要性自体は認める立場だ。 ## SNS時代の個人の向き合い方 Xのアルゴリズムは「真偽」より「バズり」を優先する方向に変化しており、意図的に偽情報を流す勢力が拡散を狙いやすくなっている。2023年の東京電力福島第一原発処理水放出の際には、中国側が「汚染水」という表現を広めようとアルファベット名の匿名アカウントを通じて大量発信を試みた事例もあった。隠していないプロパガンダであっても、物量で情報空間に影響を与えられることは現実だ。 船越さんのアドバイスはシンプルだ。衝撃的・センセーショナルな映像や情報ほど、一度立ち止まって真偽を疑うこと。ミサイル着弾や人が傷つく映像は思わず拡散したくなるが、それは偽情報の拡散に加担するリスクがある。「難しい時代になっている」ことを前提として頭に入れ、即座の共有を慎むことが今のSNSとの向き合い方として重要だと強調した。 ## この回の要点 - 外国勢力の選挙介入工作の存在は報告されているが、実際に選挙結果を動かしたという証拠はアメリカでも日本でもまだ公式に示されていない。 - 中国は選挙制度を持たないため選挙世論の動かし方に体感的知識が乏しく、船越さんは「中国=選挙介入が巧み」という過剰な警戒に疑問を呈する。 - SNSでは衝撃的な情報ほど拡散前に一度立ち止まる習慣が重要で、確認前の共有は意図せず偽情報の拡散に加担することになる。