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#105 多様化する大学入試…総合型選抜って「親の課金ゲーム」なの?
大学入試における総合型選抜(旧AO入試)が私立大学入学者の22.8%、全体で約4人に1人(19.5%)を占めるまで普及した今、専門塾の費用が年間100万円超に達し「親の課金ゲーム」と呼ばれる実態がある。テレビ朝日アナウンサーの本間ちえと報道局の富山香織・水尾ゆかが、自身の受験体験や取材内容をもとに、制度の複雑さ・経済格差・「探求公害」といった問題点と、多様化入試の根本的な矛盾を議論した。
この回が答えていること
総合型選抜とは何で、一般入試とどう違うのか?
大学・学部・学科ごとに設定された「アドミッションポリシー」に合わせ、志望理由書や小論文をオーダーメイドで提出する選抜方式。9月出願・11〜12月合格発表で年内に進学先が決まる。2025年度は私立大学の22.8%、国公立・私立合算で19.5%が利用している。
対策にはどれくらいの費用と手間がかかるのか?
高校2年から情報収集を始め、受験校ごとに書類を一から作り直す必要がある。専門塾の費用は年間100万円以上で、取材した親御さんは「課金ゲーム感は正直ある」と語った。学校が総合型の指導をしないケースでは情報収集から塾頼みになる。
経済的・情報的な格差は総合型選抜にどう影響するのか?
東京大学大学院の中村高康教授は「体験格差・サポート格差が顕著に現れやすく、経済的に厳しい家庭には一般試験の方がフェア」と指摘。塾費用・保護者の関与度・学校の方針によって対策できる環境に大きな差が生じる。
「探求公害」とはどんな問題か?
受験対策として高校生が企業や団体に探求学習の問い合わせを大量に送りつけ、現場の業務を圧迫している現象。ジャーナリストの濱田恵子氏が命名し、AIで作成したと思われる薄いメールが殺到するケースも報告されている。
入試の多様化は本当に多様な人材を生み出せているのか?
専門塾による「最適化」が進み、多様性を目指したはずの制度で似たような学生が集まる構造になりつつある。中村高康教授は「入試の多様性は正しいという前提を外した方がいい」と提言。AIで書類を作る受験生が増えれば形骸化がさらに進むリスクがある。
4人に1人が使う時代になった総合型選抜
大学入試の秋が本番を迎えた。9〜10月が出願ピーク、11〜12月に合格発表という総合型選抜のスケジュールにより、年内に進学先が決まる受験生が増えている。文部科学省「入学者選抜実施状況の概要」(2025年度)によると、国公立大学では一般選抜76.3%・総合型選抜7.3%・学校推薦16.5%。私立大学では一般選抜38.3%・総合型選抜22.8%・学校推薦38.8%と、ほぼ3等分に近い構成だ。国公立・私立を合わせると入学者の19.5%、約4人に1人が総合型選抜を利用している計算になる。
出演者の一人、本間ちえアナウンサーも、かつてAO入試(現在の総合型選抜)に2度挑戦して不合格になった経験を持つ。「学校の成績が重視されにくいから受けた」と振り返るが、「学びたいことの解像度が低かった」と認め、結局一般入試で同じ大学に進学した。
「就活」のような高2からの準備と年間100万円超の専門塾
総合型選抜の大きな特徴は、大学・学部・学科ごとに設定されたアドミッションポリシー(どんな学生に来てほしいかという大学の方針)に合わせ、志望理由書や小論文を完全オーダーメイドで作る必要がある点だ。番組が取材した、息子が昨年総合型選抜を受験した親御さんによると、準備は高校2年から始まり、複数校を受けるなら書類を一から書き直す必要がある。「就活と同じ」と感じるほどの手間がかかる上、出願スケジュールも大学ごとにバラバラで管理が煩雑だ。
その複雑さを補うのが専門塾だが、費用は年間100万円以上。この親御さんは「課金ゲーム感は正直ある」と証言した。学校によっては一般入試の合格実績を重視するあまり、総合型の指導・サポートをほとんど行わないケースもあり、塾なしでは情報収集すら難しい環境がある。一方、新学校(進学校の意)は「一般入試でトップ校に入ってほしい」という実績重視から、総合型に全く力を入れない場合もあるという。
体験格差・サポート格差が如実に出る構造
東京大学大学院の中村高康教授(教育社会学)はインタビューで、「熱心に取り組める家庭とそうでない家庭では情報量に差が出る。学校によっても対応が異なるため、正直ガチャがある」と述べた。一般入試であれば教科書の内容で点数を積み上げられるが、総合型は体験の質・量と、それを支えるサポート環境に左右される。「経済的に厳しい家庭の子どもには一般試験の方がフェア」という見方もあると教授は指摘した。
番組ゲストのジャーナリスト・濱田恵子氏(娘が数年前に受験経験)も「子どもが一人でこの複雑なシステムを調べてやりきるのは根本的に無理。親がフォローせざるを得ないシステムになっている」と述べ、純粋に勉強に振り切る方がよいのではと疑問を呈した。
現場を疲弊させる「探求公害」
受験対策として、高校生が企業や社会団体に探求学習の問い合わせを大量に送りつける現象が広がっている。濱田氏はこれを「探求公害」と命名した。IT系企業にはAIで作成したと思われる薄い内容のメールが殺到しており、返信しても動機が伴っているのか分からないケースが多いと取材先は語る。濱田氏がこの記事をSNSで紹介したところ、「うちにも来ています」と多くの現場関係者から賛同の声が集まったという。
本間アナ自身も受験期に盲導犬支援の募金活動ボランティアを経験しており、「きっかけに下心はあったけど、犬が好きという自分の興味は本物だった」と述べた。問題はきっかけではなく、入試のためにボランティア活動が機能化してしまう制度の構造にあるとしている。
「多様性の罠」と制度の根本問題
中村高康教授は「入試の多様性は正しいという前提を外した方がいい」とまで言及した。多様な人材確保を目的とした制度が、専門塾による最適化を経て結局似たような書類・経験を持つ学生が集まる構造になっている。AIで書類を作成する受験生が増えれば、さらに形骸化が進みかねない。文科省はすでに年内入試での面接実施を促す通達を出しており、今後は「教室で書く小論文」のようなリアルな評価へシフトせざるを得なくなる可能性がある。
日米を比較すると問題の根が見えてくる。アメリカは大学にアドミッション専門の職員(アドミッションオフィス)を置くが、日本は制度だけを取り入れ、入試業務は教授・准教授が兼務しているケースが多い。体制が整わないままの多様化のしわ寄せが学生・家庭・受け入れ現場にかかっている。
一方で、ある有名私立大学の教授は「総合型で入った学生は授業出席率が高く、レポートもきちんと提出する傾向があり、教員としては歓迎の面もある」と証言。また研究者の中村真希子氏が指摘するように、「欠席しない」「やり抜く力がある」という特性が大学でその後も伸びるという知見もある。一般入試とどちらが良いではなく「両方あった方がいい」という声もあり、制度そのものの廃止より運用改善を求める論調が番組では中心となっていた。
この回の要点
- 私立大学入学者の約23%が総合型選抜で入学。専門塾の費用は年間100万円超で、「親の課金ゲーム」という言葉は取材した親御さん自身の表現だ。
- 日本はアメリカ型の総合型入試を制度だけ取り入れ、専任のアドミッション職員を置かないまま大学教員が兼務する構造的矛盾を抱えている。
- 多様性を目指した入試が塾による最適化で形骸化しつつあり、AIの普及でさらに「中身の見えない選抜」になるリスクが高まっている。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。