# #104 “跡取り娘”が日本を救う? 「女には無理」を超えれば地域経済の起爆剤になる!? - Show: ホンマのホンネ ~わたしたちのモヤモヤニュース会議~ - Published: 2026-10-06 - Canonical: https://podc.club/episode/1770427874_2a2297fb1c9b.html - Audio: https://traffic.megaphone.fm/TAC5472573239.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 日本後取り娘教育協会が発表した「女性後継者白書2026」を軸に、跡取り娘が家業を継ぐ際に直面する困難を具体的なデータで検証する。明治35年創業・甲州の老舗和菓子メーカー金精軒製菓の跡取り娘・小野さんの取材エピソードを通じ、父親からの偏見・育児との両立・孤独な経営判断といったリアルに迫る。後継者不足に悩む日本の中小企業にとって、跡取り娘の活躍が地方の女性人材流出を食い止める起爆剤になりうると論じる。 ## この回が答えていること ### 女性後継者の何パーセントが『女性であることが事業承継に影響した』と回答しているか? 女性後継者白書2026の調査では65.4%が「女性であることが事業承継の課題に影響した」と回答。後継者不足が深刻な日本の中小企業において、この割合は看過できない水準だと番組では指摘している。 ### 跡取り娘が具体的に受ける差別や困難にはどのようなものがあるか? 取引先や社内から「女か」と露骨な態度を取られる、子育て中で夜の会合・麻雀・ゴルフに参加しづらく人脈が築きにくい、娘が結婚して苗字が変わると「家の財産が外に出る」と親族に受け止められるなど、複合的な障壁が存在する。 ### 老舗和菓子店・金精軒製菓の跡取り娘はどのような経緯で経営に関わるようになったか? 美術大学卒業後に東京のデザイン会社に就職し、26歳で地元に戻って金精軒製菓に入社。子どもが生まれるまでの3年間勤務した後、7年間育児に専念。復帰後にホームページ制作プロジェクトを主導し、今年、専務取締役に就任した。 ### 跡取り娘が経営を引き継いだ後、企業の業績はどうなっているか? 白書によると、女性後継者が経営を引き継いだ後に売上が増加した企業は54.8%にのぼる。番組では「娘が継いだからダメになる」わけではないことを示すデータとして紹介している。 ### 白書が掲げる3つの提言の内容とは何か? ①経営者が育児・介護と経営を両立できる支援環境の整備、②性別を問わず後継者候補を早期から育てる仕組みづくり、③女性経営者を地域の変革人材として位置づける仕組みづくり、の3点を提言している。 ## 本文 ## 女性後継者白書2026が示したデータ 日本後取り娘教育協会が2026年に発表した「女性後継者白書」によると、女性後継者の**65.4%**が「女性であることが事業承継の課題に影響した」と回答した。日本には中小企業が約337万社あり、全企業の99.7%を占める。そのうち後継者がいないとされる企業は**50.8%**にのぼり、後継者不足は日本経済の深刻な構造問題だ。 具体的な困難として白書が挙げるのは、取引先や社内から「女か」と露骨な態度を取られること、子育て中は夜の会合・麻雀・ゴルフに参加しにくく人脈が築けないこと、そして娘が結婚して苗字が変わると「家の財産が外に流出する」と親族に受け止められることなど多岐にわたる。「娘に継がせることで財産が外に出る」という感覚は、娘が婚姻で別姓になることと家業の所有者意識が結びついた、根の深いバイアスだと出演者は分析した。 一方で、女性後継者が経営を引き継いだ後に売上が増加した企業は**54.8%**という数字も示されており、「跡取り娘だからうまくいかない」という先入観を覆すデータとなっている。 ## 老舗和菓子店・金精軒製菓の跡取り娘 番組が取材したのは、明治35年創業・120年以上の歴史を持つ甲州の老舗和菓子メーカー「金精軒製菓」の専務取締役・小野さん。4代目の父親が現社長を務める中、今年専務に就任した跡取り娘だ。 小野さんは美術系大学を卒業後、東京のデザイン会社に就職。26歳で地元に戻り金精軒製菓に入社したが、子どもが生まれるまでの3年間働いた後、7年間育児に専念した。復帰後、会社のホームページ刷新プロジェクトを主導。この作業で会社の歴史や強みを従業員とともに掘り起こす中で、ある気づきを得た。 復帰当初、従業員が会社への不満をよく口にしていた。小野さんは当初それを「親への批判」として受け止め、非常に辛かったという。しかしホームページ制作を通じて社員の声を丁寧に拾ううちに、「まだ残ってくれている人たちは会社を深く愛しているからこそ、もっとこうしてほしいと言っていた」と気づく。不満に聞こえていた言葉が「希望の言葉」に変わった瞬間だったと取材で語っている。 父親からは「製造業は男じゃないとできない」「女には無理」と言われて育った。残業したいタイミングで子育て優先を迫られるもどかしさも経験した。リーダーシップのスタイルについても、父親の100%トップダウン型のカリスマ経営を「自分には真似できない」と認識した上で、「たくさんの人に協力してもらうことなら私にもできる」と語り、育成システムの構築や原価計算の仕組みづくりなど、属人化した経営の組織化を進めようとしている。「自分が台を継いだ後、さらに100年続く企業に成長していきたい」という言葉が印象的だ。 ## 孤独な経営判断と相談先の不在 白書では相談先についてのデータも公表されており、1位は「家族・親族」(55.8%)、2位は税理士・弁護士などの「士業」(44.2%)。「女性経営者・後継者のコミュニティ」は12.5%、「商工会・商工会議所」はわずか**3.8%**にとどまる。「特にない」と答えた人も17.3%いた。 地方では、2代目・3代目の男性経営者同士が集まる業界団体やクラブ的なつながりが古くから機能している。だが跡取り娘はそもそも数が少なく、そうした場に入りにくい雰囲気もある。経営の悩みを同じ立場の人間と共有できる場がないまま孤独に意思決定を迫られるのが、跡取り娘特有の構造的問題だと番組は指摘する。 また、後継者候補として育てられるかどうかに男女差が生まれている問題も議論された。出演者の一人が、同世代の男性の友人から「幼い頃から父親に『どんな組織でも必ずリーダーになれ』と言われ続けた」というエピソードを聞き、「帝王学」の有無に愕然としたというエピソードを紹介。後継者として娘を想定していない親世代は、人脈形成の場への連れ出し方からすでに息子と娘で異なっており、それが将来の経営力の格差につながっている。 ## 跡取り娘が地方を変える起爆剤になる 日本後取り娘教育協会代表理事の内山さんによると、女性経営者は自らがケアの担い手・子育て経験者であるため、職場環境の整備や働きやすい仕組みづくりに積極的なケースが多い。その結果、地方の中小企業で女性の正社員登用が増えるといった変化が起きているという。 白書では女性活躍推進を「強化している」企業が**48.1%**、「これから強化する予定」が14.4%と、合わせて6割超の跡取り娘が職場改革に動いている。これは、長年課題とされてきた「地方からの女性人材流出」を食い止める動きと直結すると番組は強調した。意思決定者が女性になることで、女性が働きやすい職場が増え、地方の雇用が創出されるという好循環が期待できる。 ## 白書が掲げる3つの提言 白書は解決策として3つの提言を示している。**第1に**、経営者が育児・介護と経営を両立できる支援環境の整備。従業員向けの育児・介護支援制度はあっても、経営者自身が使えるものは少なく、ベビーシッター補助の税額控除なども不十分な現状がある。**第2に**、性別を問わず後継者候補を早期から育てる仕組みづくり。娘を候補として人前に連れ出し、後継者として紹介することから始める意識改革が親世代に必要だ。**第3に**、女性経営者を地域の変革人材として位置づける仕組みづくり。商工会・青年会議所といった地域経済の結節点に跡取り娘が参加しやすくなることで、自治体・政治家とも連携した地域活性化の担い手として機能させることが求められる。番組では「自治体や政治家がもっとここに目を向けるべきだ」と強く訴えた。 ## この回の要点 - 女性後継者の65.4%が「女性であることが承継の妨げになった」と感じており、後継者不足が深刻な日本の中小企業にとって跡取り娘の活躍は経済的急務である。 - 金精軒製菓の事例が示すように、跡取り娘はカリスマ型ではなく組織化・仕組みづくり型のリーダーシップで企業変革を推進し、職場環境の整備が地方の女性正社員登用増加につながっている。 - 相談先となるコミュニティや商工会へのアクセスが極めて限られており、孤立しがちな跡取り娘を横でつなぐ支援と、後継者候補として早期から育てる親世代の意識改革が急がれる。