# #106 政治部記者って何してるの?朝ポキでおなじみ “ふなさま”冨名腰隆さんに素朴な政治のギモンを聞いてみた - Show: ホンマのホンネ ~わたしたちのモヤモヤニュース会議~ - Published: 2026-10-20 - Canonical: https://podc.club/episode/1770427874_12376e66c7d4.html - Audio: https://traffic.megaphone.fm/TAC2699708162.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 朝日新聞ポッドキャスト「朝ポキ」でおなじみの冨名腰隆さんをゲストに迎え、政治部記者が実際にどんな生活・取材をしているかを赤裸々に語った回。早朝の「朝回り」から始まり、自民党本部の「壁耳」取材、議員事務所への住み込み作業まで、表に出にくい取材現場のリアルが次々と明かされた。 ## この回が答えていること ### 冨名腰隆さんはどのようなキャリアを歩んできたのか? 2000年に朝日新聞入社後、政治部で官邸・与野党・財務省・外務省を担当。清華大学留学(2012〜13年)、上海支局長、北京中国総局(2018〜23年)を経て、現在は国際報道部デスクとして中国関連報道を担当する。 ### 政治部記者の「朝回り」とはどんな取材手法で、記者たちはどんな目的で参加しているのか? 担当政治家の自宅前で出勤前に声をかけ、車に乗り込むまでの約3メートルのストロークで質問する習慣。「今日、何か聞くことある?」と先手を打つのが冨名腰流。聞くことがなくても他社の動向を監視しスクープを落とさない目的で来る記者も多い。 ### 自民党本部の「壁耳」取材とは何か、なぜ今は難しくなったのか? 非公開会議室のドアに耳を当て中の発言を聴き取る取材法。議員が「表立っては言えないが有権者に伝えたい主張」をあえて漏らす双方向の場でもあったが、2014〜15年頃から職員の規制が強まりコロナも追い打ちをかけ現在はほぼ不可能。ICレコーダーは禁止だが人の耳はOKというルールが残る。 ### 冨名腰さんはどうやって議員事務所に住み込んで作業するようになったのか? 「どうやって手を抜くか」を追求した合理的発想から生まれたスタイル。議員室にいると情報が自然と入り取材相手も来る。秘書全員・電話係も含めたスタッフ全体を丁寧にケアして信頼を得ており、事務所は複数確保して使い分けていた。 ### 政治部記者が財務省などの経済省庁でも強みを発揮できる理由は何か? 予算や税制の大方針を決めるのは政治家であり、官僚より政治家ルートの方が早く情報が入る場面がある。冨名腰さんは財務省担当時、長年の人脈で財務大臣に1対1でアクセスし大臣室でも作業できた。政治家との信頼関係が取材の深さと速度を左右する。 ## 本文 ## ゲスト・冨名腰隆さんのキャリア 1977年大阪府生まれ。2000年に朝日新聞に入社し、静岡・新潟総局を経て2005年から政治部へ。官邸や自民党・公明党・民主党、財務省・外務省を担当した。2012〜13年には中国の清華大学に留学し、2016年に上海支局長、2018〜2023年は北京の中国総局で取材。帰国後は経済部、政治部デスクを経て、現在は国際報道部デスクとして中国関連報道を担当している。朝日新聞ポッドキャスト「朝ポキ」のパーソナリティとしても知られ、リスナーからは「ふなさま」と親しまれている。 経済部時代のエピソードとして、裏金問題で西村康稔経産大臣が辞任する直前の会見で、他の記者が遠慮して質問しない中、一人でひたすら聞き続けたという話が紹介された。経済部では「嫌われたくない」「お付き合いがあるから」という空気が強く、切り込みを自制する記者が多い。政治部記者はそこが違う——長年対峙してきた相手にもちゃんと聞くし、指すことは指す、というプライドが凄みだとホストの富山さんは語った。 ## 政治部記者の1日――早朝の「朝回り」 政治部記者の1日は早朝の「朝回り」から始まる。担当する派閥や政治家の自宅前に出向き、出勤前の政治家を捕まえて質問する取材手法だ。政治家は多くの場合、車で移動するため、乗り込むまでの約3メートルのストロークが勝負になる。他社の記者も複数集まることが多く、誰が先に声をかけるかという攻防が生じる。 冨名腰さんのアプローチは「今日、何か聞くことありますか?」と先に問いかけること。先輩・後輩を問わず実践してきたという。一方、特に聞くことがないのに朝回りに来る記者も多い。その目的は「他社が何を聞いているかを監視する」「万が一のスクープを落とさない」という防衛的な早起きだ。官房長官が午前の会見で発表する前に情報が朝の段階で流れてしまうこともあり、その場にいなければ乗り遅れるという緊張感がある。 国会会期中は特に朝が早い。自民党では8時から部会・研究会が始まり、9時からは委員会が開かれる。国会議員は週明けに上京して金曜夜に地元へ帰るサイクルが多く、東京滞在中は朝から動きが集中する。 ## 「壁耳」取材の実態と消滅 かつての政治取材の名物が「壁耳」だ。非公開の自民党部会などが行われる会議室のドアに耳を当て、中の発言を聴き取る取材手法。ドアの隙間から音が漏れやすく、記者たちは中腰やしゃがみ込みでドアの高い位置・低い位置に耳を当て、人が出てくる気配を感じたら瞬時に引く、という動きをしていた。 冨名腰さんによれば、これは単なる盗み聞きではなく、「テレビカメラの前で言うほどの戦う気はないが、地元の有権者に伝えたい反対意見がある」議員が、あえてドアに向かって大きな声で話すという暗黙の協力関係もあったという。議員と記者双方にとってのウィンウィンの場だった。 しかし2014〜15年頃を境に自民党職員がポールを立てて記者を遠ざけるようになり、コロナも追い打ちをかけて現在はほぼ不可能な状況に。自民党政調の職員との話し合いで「人の耳はOKだが、ICレコーダーやスマートフォンをドアに当てるのはNG」というルールが設けられているという。冨名腰さんは「自民党の良さが失われている」と職員に伝え続けているとも語った。 ## 議員事務所に「住み込む」取材術 冨名腰さんが長年実践してきたのが、議員事務所の部屋を借りて作業するスタイルだ。「どうやって手を抜けるか」を追求し続けた結果として生まれた合理的な取材術で、そこにいるだけで情報が自然と入り、取材したい人物も来てくれるという利点がある。 鍵になるのは秘書との信頼関係。「部屋の主は秘書」という認識のもと、番頭格のシニア秘書だけでなく、電話係も含む事務所スタッフ全員を丁寧にケアする。会議など部屋が使えない時間帯は別の議員事務所に移動するため、複数の事務所を確保していた。富山さんは「他社目線で一番やべえと思うタイプの記者」と表現した。 ## 政治家ルートの情報価値――富山さんの財務省体験 ホストの富山香織さんは経済部記者として財務省担当だった時期に、政治部担当の冨名腰さんと同じ記者クラブで取材した経験を持つ。その頃に気づいたのは、細かい制度の落とし込みは官僚が担うが、予算や税制の大方針・意思決定は政治家が握っており、官僚より政治家ルートの方が早く情報が得られる場面があるということ。財務省担当が終わってからその重要性に気づいた、と苦笑いまじりに振り返った。 冨名腰さんも、財務省担当時代は当時の財務大臣の朝回りに1対1でアクセスし続け、大臣室の奥の休憩室で作業することもあったと明かした。入ってくる官僚は記者がいることを必ずしも把握しておらず、自然なやりとりが聞こえてくることもあったという。政治家との長年の信頼関係が取材の深さと速度を左右する——それが「政治部の凄み」だと富山さんは語った。 ## この回の要点 - 政治部記者の朝回りは政治家の自宅前で早朝に行われ、車乗り込みまでの約3メートルが勝負。聞くことがなくても他社監視目的で参加する記者が多い。 - 自民党本部の「壁耳」は議員が意図的に情報を漏らす双方向の場でもあったが、2015年頃からの規制強化とコロナで事実上消滅した。 - 議員事務所に住み込んで作業するスタイルは「手を抜く」発想から生まれた合理的取材術で、秘書全員との信頼関係が土台になっている。