# AI分野で出遅れたアップル。反撃の一手は(岡ゆづは) - Show: 東京ビジネスハブ - Published: 2026-10-11 - Canonical: https://podc.club/episode/1697442115_fe63aa7991e8.html - Audio: https://pdst.fm/e/pscrb.fm/rss/p/traffic.megaphone.fm/TBS3873461972.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 AppleがAI向けサーバー事業への参入を検討していると報じられた。自社開発のMシリーズチップを搭載したサーバーをOpenAIやAnthropicなどのAI開発企業に販売し、NVIDIAのような「売る側」に転換するという戦略だ。NewsPicks編集部記者の岡ゆづはさんが、AppleのAI出遅れの背景から新CEO主導の反撃の一手、NVIDIA協業の思惑までを解説した。 ## この回が答えていること ### AppleはAI分野でなぜ『出遅れ』と言われているのか? 2026年上半期の設備投資額はAppleが44億ドル(約7000億円)に対し、Amazonは約1000億ドルと20倍以上の開きがある。AI向けプロダクトでも目立った成果が出ておらず、インフラ・製品の両面で後れを取っていると見られていた。 ### AppleのAIサーバー事業とは具体的にどんなビジネスモデルか? Appleが自社開発のMシリーズチップを搭載したサーバーを企業・政府向けに販売するB2Bモデル。NVIDIAからチップを「買う側」だった立場を逆転させ、チップを「売る側」に回る戦略で、2029年頃の発売が想定されている。 ### Mac StudioやMac miniがなぜ開発者の間で品切れになっているのか? OpenAIが数万台規模でAIモデルの学習・推論用クラスターとして購入しているほか、AI推論に適した性能の高さが開発者に評価されているため。最上位チップ搭載のMac Studioは7〜8週間待ちが続いている。 ### 競合のAppleにNVIDIAが技術提供を検討する理由は何か? NVIDIAはGoogleやAmazonが自社開発チップの外販を始めたことで独占的地位が崩れつつあると警戒している。Appleのサーバー事業でチップが売れなくても、チップ間をつなぐNVLink Fusionなどのネットワーク機器の売上を確保したいという思惑がある。 ### AppleのAIサーバー事業参入に残る懸念点は何か? AppleはこれまでB2B事業の経験が乏しく、過去にサーバー事業に参入して撤退した経緯がある。エンタープライズ顧客への手厚いサポート体制や、障害発生時の迅速な対応ができるかどうかが成否を左右する。 ## 本文 ## AppleのAI出遅れ——設備投資の「桁違い」な差 2026年1〜6月の設備投資額を比較すると、AppleはGAFAMの中で突出して少ない。Appleが44億ドル(約7000億円)であるのに対し、最も多いAmazonは約1000億ドルと、20倍以上の差がある。AI向けプロダクトでも「Apple Intelligence」が目立った存在感を示せず、スティーブ・ジョブズ亡き後のAppleに革新的な動きが見えないという批判が続いていた。 ## Mac StudioとMac miniが示す「隠れた実力」 Appleの製品ラインの中で直近の売上成長率が最も高いのはMacで、前年比29%増(iPhoneは22%)。その要因がAI開発者によるMac StudioとMac miniの大量購入だ。この2機種はモニターもキーボードもない手のひら2つ分ほどの箱型端末で、Apple Storeでは奥に陳列されている。 OpenAIが数万台規模でこれらを購入し、複数台をクラスター接続してAIモデルのローカルトレーニングや推論に使っていることが広まり、品切れ状態が続く。最上位チップ(M5 Ultra)搭載のMac Studioは100万円超にもかかわらず、日本では11月末まで入手困難な状況だった。 Appleは2010年頃からiPhone向けに、2018年頃からMac向けに半導体の内製化を進めてきた。加えて、2024年に解散したAppleカープロジェクトで自動運転向けに開発されたAI推論チップの技術が、現行のMシリーズに受け継がれている。 ## AIサーバー事業——「買う側」から「売る側」へ Appleが検討しているのは、このMシリーズの次世代チップ(M7 UltraやM8 Ultraを想定)を搭載したサーバーをエンタープライズ向けに販売する事業だ。発売は2029年頃を想定。コンシューマー向けMac Studioで証明した「AIに強いチップ」をそのままサーバー製品に転換し、OpenAI・Anthropicなどのモデル開発企業や政府機関に販売する。 AnthropicはNVIDIA一本に依存しない調達方針を持ち、GoogleやAmazonの内製チップも早期から採用していた。AppleのサーバーもNVIDIA依存を下げたい企業の有力な選択肢になりうると岡さんは分析する。 ## NVIDIAとApple——競合と協業の複雑な関係 AppleとNVIDIAはもともと関係が良好ではなかったとされる。ジョブズ時代にApple製品向けGPUを提供していた一方で、NVIDIAがPixarの技術を流用したのではないかとジョブズが疑っていたとも言われている(未確認)。カスタム仕様を求めるAppleと汎用品を売るNVIDIAのスタンスの違いも摩擦の一因だった。 それでも今回、AppleはNVIDIAのNVLink Fusionという複数チップ間をつなぐネットワーク技術を採用することを検討していると報じられている。NVIDIAにとって競合になりうる相手に技術を貸す理由は、GoogleやAmazonの自社チップ外販でNVIDIAのシェアが侵食され始めているからだ。フルスタック(チップ+ネットワーク機器)で売れなくても、ネットワーク機器だけでも販売先を確保したいという危機感が背景にある。 ## 新CEO主導の「肝入りプロジェクト」とB2Bの壁 このAIサーバー事業を1年ほど前から主導してきたのが、当時ハードウェアエンジニアリングのトップだったジョン・ターナス氏だ。2001年入社で26年近くハードウェア畑を歩んできた同氏は、2026年9月にAppleの新CEOに就任した。ティム・クック前CEOは株価・売上の面では優秀な経営者だったが、AI時代の種まきという観点では評価が分かれるところだ。 ただし懸念も残る。AppleはB2B事業の経験が薄く、過去のサーバー事業参入も失敗に終わっている。障害時の即時対応や専任サポートなど、エンタープライズ向けの体制構築は「かっこいいものを作る」とは別の能力が必要になる。他のGAFAM各社がAIインフラ投資で設備投資・フリーキャッシュフローを圧迫し、社債発行でまで資金調達している中、Appleは自社チップを売るだけで同じ土俵に立てるかもしれない。岡さんは「後から振り返ったとき、最も賢い選択だったと言われる可能性がある」と評価する。 ## この回の要点 - AppleはMシリーズ内製チップを武器にAIサーバー事業への参入を検討しており、NVIDIAのような『チップを売る側』に転換する戦略が注目される - Mac StudioとMac miniはOpenAIが数万台規模で購入するほどAI推論性能が評価されており、品切れが示すコンシューマー機の限界がエンタープライズ製品開発の動機になっている - NVIDIAはGoogleやAmazonの自社チップ外販に危機感を持ち、競合のAppleにも自社ネットワーク技術を提供してでも売上を確保しようとしている