10月2日(金)変わる、職場の「当たり前」〜with NIKKEI
職場の制服・女性タクシー乗務員・コンビニのアバター接客という3つの事例を軸に、「当たり前」だった職場の仕組みが多様な働き手に合わせて変わりつつある潮流を、日本経済新聞の川上めぐ記者が解説する。65歳以上が就業者の約7人に1人を占め、障害者雇用が70万人超に達するなか、制服・雇用環境・接客技術それぞれで具体的な刷新が進んでいる。
この回が答えていること
職場の制服が見直されている背景には何があるか?
働き手の多様化が最大の要因だ。国内の外国人労働者は増加し続け、65歳以上の就業者は約7人に1人、民間企業で雇用される障害者は70万人超に上る。体格・特性・動かしにくい部位など個人差が大きく、「標準的な働き手」を前提とした従来の制服では対応しきれなくなっている。
高知県の四国銀行は制服についてどのような変化を取り入れたか?
ビジネスカジュアルを導入し、女性の制服を廃止した。男女の服装差をなくして誰もが働きやすい職場づくりを推進する動きの一例であり、制服をめぐる多様化対応の象徴的なケースとして紹介された。
女性タクシー乗務員はどのくらい増えており、職場環境づくりにどんな取り組みが進んでいるか?
全国ハイヤー・タクシー連合会の調査では、2026年3月末時点の女性乗務員は14,382人で前年比10%増・過去最高。ただ全乗務員に占める割合はまだ5.9%(約17人に1人)だ。イコマ交通では女性専用ロッカー・トイレの整備や託児所との契約を検討するなど、各地のタクシー会社が環境整備を進めている。
ローソンが導入したアバター接客とはどのような仕組みで、どんな効果が出ているか?
店内モニターのキャラクターが来店客に話しかけセルフレジの使い方を案内する仕組みで、操作しているのはAIではなく自宅などにいる人間のオペレーターだ。1人で複数店舗を担当できるため店頭スタッフは別業務に集中でき、セルフレジ利用率が15%以上向上、レジ業務に割く時間が1店舗あたり平均1.5時間以上減少した。2026年時点で78店舗に展開している。
制服・タクシー・アバター接客という三つの変化に共通する方向性とは何か?
「仕組みに人を合わせる」のではなく「働く人に仕組みを合わせる」という発想の転換だ。一部の人への工夫が結果的に多くの人の働きやすさにつながり、人手不足が続く中でこの見直しは企業が人材を確保・定着させるための条件にもなりつつある。
働き手の多様化が促す制服の見直し
かつて制服は「職場に統一感を出す」「一目で職種が分かる」ための機能を担ってきた。しかし今、その役割が問い直されている。背景にあるのは働き手の多様化だ。国内の外国人労働者は増加し続け、65歳以上の就業者は働く人のおよそ7人に1人を占める。民間企業で雇用される障害者は70万人以上に達し、法定雇用率は2026年7月に2.7%へ引き上げられた。
体格の大きい人、物の置き場所を覚えるのが苦手な人、周囲の視線に敏感な人、肩や腕を動かしにくい人——それぞれの個性や特性によって、制服の着心地や使いやすさは大きく異なる。ニュースレターで取り上げた記事では、実際に働く人の声を聞き取りながらオリジナルユニフォームを作る企業の事例が紹介されている。
取材した川上記者は「体のラインを隠したい、汗じみを目立たせたくない、着脱を楽にしたいといった悩みは、多くの人が一度は感じたことがあるはず」と語る。一部の人のための工夫が、実は広く働きやすさにつながるという視点だ。高知県の四国銀行はビジネスカジュアルを導入して女性の制服を廃止。男女の服装差をなくし、誰もが働きやすい職場づくりを推進する動きも広がっている。
女性タクシー乗務員が過去最高を更新
全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、2026年3月末時点の女性乗務員は14,382人で、前年比10%増・過去最高を更新した。ただ、全乗務員に占める割合はまだ5.9%——ざっくり17人に1人ほどにとどまる。
人手不足を背景に、各地のタクシー会社は女性も働きやすい環境づくりに乗り出している。イコマ交通では女性専用ロッカーやトイレの整備を進めるほか、託児所との契約も検討中だという。
ローソンのアバター接客——1人で複数店舗を担当
コンビニ大手ローソンは、札幌市内3店舗でアバターを使った接客を開始した。店内のモニターに映るキャラクターが来店客に話しかけ、セルフレジの使い方などを案内する仕組みだ。
一見するとAIが自動で話しているように見えるが、実際にアバターを操作しているのは自宅などで働く人間のオペレーターだ。最大の特徴は、1人のオペレーターが複数店舗の接客を同時に担当できる点にある。店頭スタッフはその間、店内整理や売り場メンテナンスといった別の業務に専念できる。
ローソンは2022年からアバター接客の実証を開始。2026年時点で東北・関東・近畿・四国など78店舗に展開している。効果として、セルフレジの利用率が15%以上向上し、店舗スタッフがレジ業務に割く時間は1店舗あたり平均1.5時間以上減少したという。アバター接客は、店舗に通えない人にとっての新しい働き口になる可能性も秘めている。
三つの変化に共通する方向性
制服・タクシー・アバター接客という三つの事例に共通するのは、「仕組みに人を合わせる」のではなく「働く人に仕組みを合わせる」という発想の転換だ。接客の仕事をするなら店に出勤しなければならないという、ごく当たり前に思えた前提さえ、今は変わり始めている。
女性が働きやすいタクシー会社はきっと男性にとっても働きやすいはずであり、アバター接客は障害や育児・介護など様々な事情で外出しにくい人の就業機会を広げうる。人手不足が続く中、「当たり前の見直し」は企業が人材を集め、定着させるための条件にもなりつつある。今は珍しく見えるものが、数年後にはすっかり新たな当たり前になっているかもしれない。
この回の要点
- 65歳以上が就業者の7人に1人、障害者雇用70万人超という働き手の多様化が、制服・環境・接客手段の刷新を後押ししている。
- ローソンのアバター接客は2026年時点で78店舗に拡大し、セルフレジ利用率15%以上向上・レジ業務時間1.5時間以上削減という具体的な成果を出している。
- 三つの変化に共通するのは「仕組みに人を合わせる」から「人に仕組みを合わせる」への転換であり、人手不足下で人材確保・定着の条件にもなりつつある。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。