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【土曜版 #99】米中間選挙・徹底分析。「トランプ時代の終わりの始まり」か(ゲスト:今村卓さん)
2026年11月3日に実施されるアメリカ中間選挙を前に、丸紅経済研究所社長でワシントンウォッチャーの今村卓氏が現状を分析。トランプ政権の支持率は39%・強い不支持53%と2017年以来最低水準に沈み、公約だった「物価引き下げ」と「愚かな戦争はしない」の二本柱がいずれも崩れたことが背景にある。下院は民主党奪還がほぼ確実視され、当初は共和党優勢とみられた上院でさえ民主党が過半数を取る可能性が浮上している。
この回が答えていること
なぜトランプ政権の支持率はここまで下がったのか?
公約した「物価引き下げ」が実現せず、関税やイランとの戦争が逆効果となった。実質賃金がマイナスに転じ、住宅ローン金利が7%に達するなど生活苦が深刻化し、2024年大統領選でトランプに投票した岩盤以外の層が剥落している。
関税政策はなぜ有権者の反発を招いたのか?
トランプ氏は「外国企業が払う」と主張したが、エコノミストの分析で関税コストの8〜9割はアメリカの企業・消費者が負担していることが判明した。さらに一部の関税措置は違憲として司法に覆され、経済へのプラス効果はほぼ消えた。
イランとの戦争はどのような経緯で始まり、なぜ泥沼化したのか?
トランプ氏は選挙戦で「愚かな戦争はしない」と訴えていたが、ネタニヤフ首相に「レガシーを残せる」と説得され開戦を決断した。イランはドローン・安価なミサイルで非対称戦を展開し体制を維持。ホルムズ海峡を抑えてアメリカを揺さぶり、半年経っても収拾がつかない状態が続いている。
中間選挙で下院・上院それぞれどのような結果が予想されるか?
下院(435議席全改選)は民主党奪還がほぼ確実で、共和党内部でも「下院はダメ」という認識が広がっている。上院(35議席改選、現有53対47で共和党優勢)は当初共和党維持が濃厚とみられたが、赤い州での共和党候補の不振が相次ぎ、民主党が53議席超えを狙える情勢に変わりつつある。
民主党が両院を制した場合、トランプ大統領の弾劾はあり得るか?
弾劾の可能性は極めて低い。弾劾成立には上院の3分の2が必要であり、共和党上院議員が賛成する見込みはほぼない。現実的な動きとしては、トランプ政権の政策やファミリービジネスとの利益相反に関する徹底的な議会調査(インベスティゲーション)が民主党の主な戦略になると予想される。
トランプ2期目の支持率低下と構造的な天井
パーソナリティの野村孝文氏は、トランプ政権の支持率が現在39%・強い不支持53%と2017年以来の最低水準にあることを確認した上で、今村卓氏に分析を求めた。今村氏はまず「トランプ氏の支持率の上限はそもそも50%強」と指摘する。民主党支持者や無党派層の約半数は構造的に離れており、共和党内の岩盤だけでは5割を超えられない。それでも2期目の出発点はやや高かった。バイデン政権下でインフレが約2割進んで生活苦が深刻化した有権者が、「物価は下がる」と明言したトランプ氏に期待を寄せたからだ。今村氏はこの「物価を下げる」という公約こそが、白人労働者層を超えて黒人・ラティーノにまで支持を広げた最大の要因だったと見る。
関税政策の誤算と生活苦の深刻化
トランプ氏は関税について「外国の輸出企業が払う」「アメリカの財政改善にもなる」と主張し続けた。しかし1年で結果が出た。複数のエコノミストや研究機関の分析が示したのは、関税コストの8〜9割はアメリカの輸入企業か消費者が負担しているという事実だ。利幅が薄い輸出側が全額を吸収することは不可能であり、価格転嫁は必然だった。さらに、強引な手法で課した一部の関税は違憲として司法に覆されている。
インフレ率はバイデン政権期の8〜9%から足元の3.7%まで下がってはいる。しかし有権者にとって問題なのは前年比の率ではなく、数年前と比べた絶対的な価格水準だ。iPhoneの新モデルはAIブームによるチップ・メモリ価格高騰で大幅に値上がりし、ディーゼル燃料はトラックやバスの輸送コストを直撃している。住宅ローン金利は7%に達し、持ち家という「ささやかな夢」が遠のいた。実質賃金はマイナスに転じており、今村氏は「かつてはアフォーダビリティ(手が届くか)という言葉だったのが、今は露骨に『生活苦』と言われるようになった」と表現する。
イランとの戦争が招いた公約の二つ目の崩壊
トランプ氏の選挙戦での二本目の柱は「愚かな戦争はしない」だった。アフガニスタン・イラク戦争への批判票を取り込んだこの公約も、今は空手形となっている。今村氏によれば、ネタニヤフ首相が「あなたは50年間のアメリカの宿敵を打ち砕ける。核の脅威も排除できる」と説得し、トランプ氏も大統領のポジションが持つ「軍を動かせる高揚感」に動かされて開戦に踏み切ったという。
開戦前には「ベネズエラ方式」の成功体験があった。体制を崩さずに圧力をかけて親米化させる電撃的な外交・軍事作戦で、今村氏は「絶妙だった」と評する。しかしイランはベネズエラとは違った。体制は強固で、ホルムズ海峡を押さえてアメリカに非対称のダメージを与える能力を持ち、ドローン・安価なミサイルで半年間抵抗し続けた。地上軍投入はアメリカ兵の大量犠牲につながるため現実的でなく、高額ミサイルによる攻撃を続けるしかない。このタイミングで中間選挙を迎えてしまった、というのが今村氏の整理だ。
選挙情勢:下院は民主党確実、上院は混戦
11月3日に実施される中間選挙は下院435議席の全改選と上院100議席のうち35議席の改選が軸となる。下院については、共和党内部でも「下院はダメだ」という声がメディアに漏れるほど民主党奪還がほぼ確実視される。ただし今夏に共和党が州レベルで断行したゲリマンダー(民主党支持者が多い選挙区を細かく分割し、共和党候補が勝ちやすい区割りに変更)の効果で、接戦区は40程度しかなく、2006年や2010年のように50〜60議席が動く大波にはならないとみられている。最大でも30議席前後の動きとの予想だ。
上院は当初、現有53対47で共和党優勢の中、今回の改選対象が赤い州(共和党強固な地盤)に偏っているため「民主党が4議席奪って51議席を確保するのは無理」と言われていた。ところが9月以降、赤い州でも共和党候補への不信が目立ち始めた。インフレと戦争への不満から、かつてトランプを支持した穏健な共和党支持者が投票先を変えるか棄権するかという動きが広がったためだ。今では「民主党が53議席を取っても不思議ではない」という見方まで浮上しており、今村氏は「ある意味、共和党の自滅に近い」と表現する。
民主党が両院を制しても弾劾は極めて困難
仮に民主党が上下両院を制しても、トランプ大統領の弾劾は現実的ではないと今村氏は見る。弾劾成立には上院の3分の2の賛成が必要であり、今の共和党はほぼ「トランプ党」化しているため議員が弾劾に賛成する見込みはない。唯一の歴史的先例は1974年のニクソン大統領の辞任劇だが、あの時は共和党上院議員がニクソン氏に直接「このままでは弾劾を通す」と迫ったことで辞任に追い込まれた。今回そこまでの動きが共和党内部から出るかどうか、今村氏は「可能性は非常に低い」と断じる。
現実的な民主党の戦略は「徹底的な調査(インベスティゲーション)」だ。トランプ氏の政策決定にファミリービジネスとの利益相反がなかったかどうか、アメリカの政治的良識が禁じてきたグレーゾーンを議会が掘り起こしていく展開になると今村氏は予測する。
この回の要点
- トランプ2期目は「物価を下げる」「愚かな戦争はしない」の2大公約がいずれも崩れ、実質賃金マイナス・住宅ローン7%の生活苦で岩盤以外の支持層が急速に剥落している
- 下院は民主党奪還がほぼ確実。上院も今夏のゲリマンダーにもかかわらず赤い州での共和党候補不振が相次ぎ、民主党が53議席超えを狙える異例の展開に変わりつつある
- 両院を民主党が制しても弾劾成立には上院3分の2が必要で現実的ではなく、議会調査によるトランプ政権の利益相反追及が主戦場になると予想される
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。