須田慎一郎「政治家本人による報道の否定、相次ぐ!その背景は?」10月22日
経済財政担当大臣が日銀の利上げを阻止するため議決延期請求権の行使を周囲に相談していたと毎日新聞が報じたのに対し、大臣本人が「取材すら受けていない」と繰り返し否定する事態が一週間にわたって続いた。同じ時期に財務大臣や小泉・小野寺両大臣をめぐる報道でも本人否定が相次ぎ、フリージャーナリストの須田慎一郎が当事者取材を怠るメディアの慣行と、SNS時代における政治家と報道機関の関係変化を解説した。
この回が答えていること
毎日新聞が報じた議決延期請求検討の記事と大臣の否定は、どのような経緯で繰り返されたのか?
10月14日に毎日新聞デジタルが「大臣が日銀の利上げを止めるため議決延期請求を周囲に相談」と報道。16日の閣議後会見で大臣が全面否定し、毎日新聞もその否定を伝えた。ところが翌17日、毎日新聞は紙の朝刊一面トップに同内容を再掲載し、否定と報道が繰り返される異常な展開となった。
大臣本人は担当記者の取材についてどのように主張しているのか?
大臣は須田氏への電話取材で「そのような発言は絶対にしていない」と明言した上で、14日・16日・17日の三度の報道において担当記者から直接取材を受けた記憶がないと強調。「取材があって然るべきではないか」と強い不満を示した。
同時期に起きた他の「報道否定」事例にはどのようなものがあるか?
G20で片山財務大臣が長期金利上昇について中国側から激しく指摘されたとの報道を大臣が否定。新内閣発足時のアンケートをめぐり小泉大臣と小野寺大臣がそれぞれ報道内容を自身のXで否定した。日本テレビは小泉・小野寺両氏に関する報道について訂正放送を行った。
当事者確認を怠った報道が生まれる背景として、何が指摘されているか?
閣議後会見は毎週火・金曜に開かれ、フリーランスも申し入れをすれば出席できる。それでも当事者取材が省かれ、否定された場合にその事実を記事に添えるという「裏取りのいろはのい」がなされていない。記者と政治家の間の信頼関係や日常的な接触の希薄化も背景にあると指摘された。
SNSの普及は政治家と報道機関の関係をどう変えたのか?
SNS以前は誤報への反論手段が乏しかったが、今は政治家が即座にXで訂正・反論できる。須田氏が10年前に取材した政治家は「当時の報道は8割が嘘だったが、SNSがなく訂正できなかった」と振り返っており、SNSの普及がメディアへの緊張感を生んでいるとの見方が示された。
毎日新聞vs経済財政担当大臣――否定と再報道が繰り返された一週間
10月14日、毎日新聞デジタルが「経済財政担当大臣が、日銀の金融政策決定会合での利上げ決議を阻止するため、議決延期請求権の行使を周囲に相談していた」と報じた。日銀の利上げが政権の推進する積極財政路線に影響しかねないとの判断があったとされる内容だ。
翌15日(木)を挟んだ16日(金)の閣議後会見で、他社記者から「その記事は事実か」と問われた大臣は全面否定した。「利上げを止めるために議決延期請求を検討したことは一切ない」と明言し、毎日新聞もその日のデジタル版でこの否定発言を伝えた。この時点では一度収束したかに見えた。
ところが翌17日(土)、毎日新聞は紙の朝刊一面トップに同内容の記事を再掲載した。否定と報道が繰り返されるという前例の少ない展開に、関係者の間で混乱が広がった。
須田慎一郎が直接電話取材――「取材を受けた覚えがない」
須田氏は18日(日)夜、大臣への電話取材を実現した。大臣の主張は一貫していた。「言ったことに変わりはない。そのような発言は絶対にしていない」。さらに問題となったのは、14日・16日・17日の三度の報道のいずれにおいても、担当記者から直接取材を受けた記憶がないという点だ。
大臣は「記事を書くなとは言わない。ただ、取材があって然るべきではないか。取材の結果を記事に反映すべきではないか」と述べた。翌週火曜の閣議後会見では、その担当記者が姿を見せず「逃亡」とも報じられた。大臣は会見冒頭で改めて報道内容を否定した。
また、大臣が日銀の金融政策決定会合への出席を示唆したことも「プレッシャーをかけている」というトーンで報じられたが、須田氏はこれを疑問視する。経済財政担当大臣のオブザーバー出席は本来の職務であり、これまでの歴代大臣が時間的都合を理由に欠席してきた経緯がある。出席しないことのほうが本来は異例なのだという。
相次ぐ「報道否定」――財務大臣、小泉大臣、小野寺大臣
同じ時期、別の閣僚をめぐっても報道と否定が連続した。G20財務大臣・中央銀行総裁会議において片山財務大臣が長期金利上昇について中国側から激しく指摘されたと報道されたが、片山大臣は会見でこれを否定した。
新内閣発足時のアンケートをめぐっては、小泉大臣が防衛大臣を希望したとテレビが報じたが、小泉大臣はこれを否定。小野寺大臣(参議院議員)は「参議院議員はそもそもアンケートの対象外であり、回答する立場にない」と自身のXで指摘し、報道内容の誤りを正した。日本テレビはこの件について訂正放送を行った。
取材慣行の劣化――「裏取りのいろはのい」ができていない
須田氏はこうした事態の背景に、メディアの基本的な取材慣行の劣化を見る。閣議後会見は毎週火・金曜に開かれており、記者クラブ加盟社はもちろん、フリーランスも質問項目を添えて申し入れれば原則的に出席が認められる。「少し確認すればすぐ分かる話なのに、なぜやらないのか」と須田氏は言う。
当事者に取材し、否定されたならばその事実を記事に添えるという作業が行われていない。さらに、記者と政治家の日常的な接触や信頼関係が薄れ、本音ベースの情報交換が機能しにくくなっていることも一因だと指摘した。
SNS時代の変化――政治家が即座に訂正できる環境
この状況はSNSの普及によって新たな局面を迎えている。須田氏が10年前に取材した政治家・宮崎健介氏は「当時の報道は8割が嘘だった。訂正したくてもSNSがなかったのでできなかった」と振り返っていた。今は政治家がXなどを通じて即座に反論・訂正を発信できる。
须田氏はこの変化を報道への緊張感を生むものとしてポジティブに評価しつつ、「だからこそ報道側がしっかり取材した内容を届けているかどうかが問われる。訂正すべき誤りは日本テレビのように速やかに訂正することが必要だ」と締めくくった。
この回の要点
- 経済財政担当大臣が議決延期請求検討の報道を繰り返し否定し、担当記者が取材をしていなかったとされる異例の事態が一週間続いた。
- 閣議後会見など取材機会があるにもかかわらず当事者確認を怠る報道が相次いでおり、須田氏は「裏取りのいろはのい」ができていないと問題視した。
- SNSの普及で政治家が即座に誤報を訂正できる時代となり、報道機関には取材の徹底と迅速な訂正がこれまで以上に求められている。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。