# 【特集】超高齢社会にどう向き合えばいいのか?総人口の3割が65歳以上に(高野龍昭) - Show: 荻上チキ・Session~発信型ニュース・プロジェクト - Published: 2026-09-23 - Canonical: https://podc.club/episode/1532201544_995eb760be8e.html - Audio: https://pdst.fm/e/pscrb.fm/rss/p/traffic.megaphone.fm/TBS2672000004.mp3 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 2026年9月に総務省が公表した最新人口推計で、日本の65歳以上人口は3624万人・総人口の29.6%と過去最高を更新した。東洋大学・高野龍昭教授(高齢者福祉)を迎え、「なぜ65歳が高齢者の線引きなのか」「働く高齢者の76%が非正規という実態」「介護保険制度の持続可能性」を軸に、超高齢社会の構造的課題を掘り下げる。 ## この回が答えていること ### なぜ65歳以上が『高齢者』の基準として使われているのか? 1956年に国連が各国の人口構成を国際比較する調査で、便宜上65歳以上を「高齢者」、15〜64歳を「生産年齢人口」と定義したことがそのまま踏襲されているだけで、法律的にも医学的にも明確な根拠があるわけではない。 ### 高齢化率が上昇し続けているのは高齢者が急増しているからなのか? 急増しているわけではない。65歳以上は去年から今年でわずか2万人増にとどまる一方、65歳未満は62万人も減少しており、少子化による分母側の縮小が高齢化率の上昇を主に押し上げている。 ### 働く高齢者が増えていることは純粋に良いことといえるのか? 生産年齢人口が減るなかで経済や介護現場を支える点では肯定的だが、就業高齢者の約76%は非正規雇用で、年金水準低下により働かざるを得ない側面もあり、老化と仕事のミスマッチによる労働災害増加という影も抱えている。 ### 介護保険制度とはどのような仕組みで、今後どんな課題を抱えているのか? 40歳以上が支払う保険料と公費(税金)が50%ずつで財源を構成し、社会保険給付として介護サービスを提供する仕組みで、税金サービスへの躊躇を減らし利用者増をもたらした一方、財政面での持続可能性が課題となっている。 ### 社会保険料を引き下げることは現役世代にとって本当に得なのか? 得とはいえない。保険料引き下げは給付水準の引き下げを意味し、今削れば現役世代が高齢者になる頃には地域の病院や介護事業所が失われ、一度失われたインフラは5年・10年では復活できないため、自らの将来の生活基盤を壊しかねない。 ## 本文 ## 3割が65歳以上――数字の読み方 総務省が敬老の日に合わせて公表した2026年の人口推計では、65歳以上は3624万人、総人口に占める割合は29.6%で過去最高となった。65歳以上の就業者数は943万人と22年連続で増加し、全就業者の13.8%、約7人に1人以上が高齢者という状況だ。 高野教授はこの数字をポジティブに受け止めると強調する。「経済発展が進むほど人口は高齢化する。長く生きたいという人類の願いがここまで実現したことは、おめでたいことだ」。ただし、高齢化率の上昇は必ずしも高齢者が急増しているためではない。実際、65歳以上は去年の3622万人から今年3624万人へわずか2万人増にとどまる。一方で65歳未満は8699万人から8637万人へ62万人減少した。「島根県の人口がちょうど62万人。その分が1年で65歳未満から消えた」という数字は、少子化が高齢化率を押し上げている実態を示している。 ## 「65歳=高齢者」の線引きはどこから来たのか 法律的にも医学的にも65歳を高齢者と明確に定める規定はない。この基準の起源は1956年、国連が戦後の世界各国の人口構成を国際比較するために実施した調査だ。その際、便宜上65歳以上を「高齢者」、15〜64歳を「生産年齢人口」、0〜14歳を「年少人口」と定義したことが踏襲され続けている。高野教授は「子どもの発達は比較的標準的だが、老化は人によって差が大きい。100歳を超えてフルマラソンを走る人もいれば、30代で若年性認知症になる人もいる。年齢で一律に区切ること自体があまりよくない」と指摘する。医学・公衆衛生の分野では、1990年代の65歳以上と比べ現在の65歳以上は心身機能が10〜15年分若いというデータもあり、75歳以上を高齢者とすべきという学会提言も出ている。 ## 働く高齢者の光と影 就業高齢者943万人という数字は、生産年齢人口が減るなかで経済を支える点では肯定的に評価できる。介護現場でも、専門職のサポートとして高齢者が活躍するケースが増え、知識・経験を若い世代に伝える好循環も生まれているという。しかし高野教授は「働かなくてよい選択肢も取れる社会になってほしい」と付け加える。就業高齢者の約76%が非正規雇用という現実があり、年金水準が下がるなかで「働かざるを得ない」状況に追い込まれているという側面は否定できない。 さらに深刻なのが労働災害の増加だ。職場での転倒・骨折、屋外作業中の熱中症など、高齢者の体の老化と仕事内容のミスマッチが事故を招いている。街中で工事現場の交通誘導に立つ高齢者が猛暑や大雨にさらされる光景は、その象徴といえる。 ## 介護保険制度の仕組みと持続可能性 2000年に始まった介護保険は、40歳以上が支払う保険料と公費(税金)が各50%ずつで財源を構成し、高齢者への介護サービスを社会保険給付として提供する仕組みだ。制度導入前は全額公費の社会福祉制度だったため、利用者が「税金のサービスを使うのは引け目がある」と躊躇するケースが多かった。介護保険になったことで「社会保険だから使う権利がある」という意識が広がり、サービス利用者が大幅に増えた、と高野教授は現場経験から語る。 課題は財政だ。社会保険料の負担増を受け、「料率を下げるべき」という政治的主張も出ているが、高野教授はこれを強く警戒する。「保険料を下げる=給付水準を下げること。今削れば、今の現役世代が高齢者になって医療・介護を必要とする頃には、地域の病院や介護事業所がなくなっているかもしれない。一度失われたインフラは5年・10年では復活できない」。現役世代の手取りを増やすために社会保険料を削ることは、その世代自身の将来の生活基盤を壊すことにつながりかねない、という視点だ。 ## この回の要点 - 65歳以上は今年わずか2万人増だが65歳未満が62万人(島根県の人口規模)減り、少子化こそが高齢化率を押し上げている主因 - 就業高齢者の約76%が非正規雇用で、老化と仕事のミスマッチによる労働災害も増加しており、『働けることは良いこと』とは単純に言えない実態がある - 社会保険料を引き下げると介護・医療の給付水準が落ち、現役世代が高齢者になった時に地域の医療・介護インフラが消滅しているリスクがある