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【取材報告】火星の衛星探査機、打ち上げ成功(林公代)

2026-10-20 · 11分 · 3分で読める

2026年10月20日早朝、H-3ロケット10号機が種子島宇宙センターから打ち上げられ、火星衛星探査機MMXを予定軌道へ投入することに成功した。MMXはジャガイモ型の火星衛星フォボスに着陸してサンプルを採取し、2031年7月に地球へ持ち帰る計画で、成功すれば世界初の火星圏サンプルリターンとなる。現地で取材した宇宙ライターの林公代さんが、打ち上げの衝撃から5年間にわたるミッションの全容まで解説した。

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この回が答えていること

  • MMXはどんなミッションで、なぜ世界初と言われるのか?

    MMXは日本主導の国際共同探査で、火星の衛星フォボスに着陸してサンプルを採取し2031年7月に地球へ持ち帰るミッション。火星やその周辺天体から試料を持ち帰るのは人類史上初であるため「世界初」と位置づけられている。

  • 打ち上げの瞬間、現地ではどんな体験だったか?

    林さんは種子島宇宙センター内の竹崎展望台プレス席で見学。固体ロケットブースター4本を装着したH-3最強形態の打ち上げで「音がすごく、雲のない星空の中に強烈な光が長い間見え、振動で足がガクガク震えた」と語った。

  • フォボスのサンプルを分析するとどんな科学的知見が得られるのか?

    フォボスの起源を巡る「衝突説vs捕獲説」の決着と、火星にかつてあった海の水がどこから運ばれてきたかという太陽系輸送のヒントという2点が期待される。どちらの知見も太陽系の成り立ちを解明する上で重要だという。

  • フォボスへの着陸と帰還にはどのような技術的困難があるのか?

    通信の片道遅延が15〜20分あるため、障害物回避や着陸判断はほぼ全て自律的に行う必要がある。さらに火星のすぐ近く(約6000km)という巨大重力環境下での着陸、表面から2cm下の砂をドリルで採取し再離脱するという複雑な手順、そして日本未経験の火星周回軌道投入が連続するハードルとなる。

  • MMXは将来の有人火星探査とどう関係しているのか?

    NASAや日本が参加するアルテミス計画では有人火星探査が長期目標に据えられており、フォボスは前線基地候補と考えられている。MMXは放射線環境の調査も担っており、有人探査の安全性確立にも貢献する無人ミッションとして位置づけられている。

H-3最強形態、深夜の種子島に轟く

2026年10月20日早朝、H-3ロケット10号機が鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられた。今回搭載した形態は固体ロケットブースター4本を装着した「24形態」と呼ばれるH-3の最強構成。打ち上げからおよそ70分後、火星衛星探査機MMXを予定軌道に投入し、打ち上げは成功した。

種子島宇宙センター内の竹崎展望台プレス席で取材した宇宙ライターの林公代さんは現地の様子をこう表現した。「雲がなく星空満天の中を、太陽のような強烈な光がぐんぐんと持ち上がっていくのが長い間見えた。振動が伝わってきて足がガクガク震えるような衝撃だった」。

MMXとは――世界初・火星圏サンプルリターン

MMX(Martian Moons eXploration)は日本主導の国際共同探査計画だ。目指すのは火星の衛星フォボスへの着陸・サンプル採取・地球帰還という一連のミッション。成功すれば2031年7月、世界で初めて火星圏から試料を地球に持ち帰ることになる。

フォボスは直径約22kmのジャガイモ型の小さな天体で、火星からわずか約6000kmという至近距離を周回している。科学者チームはMMXに10グラム以上のサンプル採取を要求しているが、林さんは「微量に聞こえるかもしれないが、持ち帰ってくる量としては非常に大量」と説明した。

フォボスの砂が解く2つの謎

フォボスのサンプル分析が期待される科学的知見は主に2つある。

一つはフォボス自身の起源だ。現在は「火星に天体が衝突した際の破片が集まって形成された」という衝突説と、「遠方から飛来した小天体が火星重力に捕獲されて衛星になった」という捕獲説が対立しており、どちらが正しいかはまだわかっていない。砂の成分を分析することでその答えに近づける。

もう一つは火星の水の起源だ。火星は誕生当初は大量の海があったと考えられているが現在は存在しない。水がどこからどう運ばれてきたかという「太陽系内の輸送」のヒントも、フォボスのサンプルから得られると期待されている。

通信遅延15分、完全自律で挑む着陸

日本ははやぶさ・はやぶさ2で小天体からのサンプルリターンを世界で先駆けて実現してきたが、MMXはさらに別次元の難しさを抱える。

最大の要因は火星の巨大重力だ。フォボスは火星の至近距離にあるため、着陸中も火星重力の影響を受け続ける。加えて通信の片道遅延は15〜20分に及ぶため、障害物回避から着陸判断まで、ほぼすべての作業を探査機が自律的に行わなければならない。「地上とやり取りできるのは1回だけ。あとは全て探査機自身が判断する」と林さんは語った。

はやぶさがタッチダウンの瞬間に試料を採取してすぐ離脱する方式だったのに対し、MMXはフォボスに完全着陸したうえで、ドリル状の装置で表面から約2cm下の砂を採取し、再離脱してカプセルに収める複雑な手順が必要となる。

帰路の難関――火星周回軌道投入と身軽な帰還

採取後の帰路にも難関が続く。2027年8〜9月頃に予定される火星周回軌道投入は最初の大きなヤマ場だ。日本はまだ火星周回軌道への投入を成功させたことがなく(過去の探査機「のぞみ」も失敗)、限られたタイミングで正確な逆噴射を長時間行う必要がある。

軌道投入後は3年かけてフォボスへ2回着陸し、異なる地点のサンプルを採取する計画だ。帰還時は燃料を節約するため探査機を3段階に分けて切り捨て、最終的には帰還モジュール単体で地球を目指す。地球近傍でサンプルカプセルのみを分離してオーストラリアのウーメラ砂漠に着地させ、回収するというシナリオが描かれている。

「太陽系最重要の未踏地」が有人探査への布石に

フォボスはこれまでロシアを含む複数の国が探査を試みたが、一度も成功していない「太陽系で最も重要な未踏の地」と呼ばれる天体だ。NASAや日本が参加するアルテミス計画の先に有人火星探査が据えられており、フォボスはその前線基地候補と位置づけられている。MMXは放射線環境の調査という有人探査の安全確立にも貢献する。「MMXが成功すれば世界にとって非常に重要な成果となり、日本の技術力を示せる」と林さんは語った。

この回の要点

  • H-3ロケット10号機が火星衛星探査機MMXの打ち上げに成功し、フォボスへの着陸と2031年の地球帰還という世界初の火星圏サンプルリターンを目指す5年間のミッションが始まった。
  • フォボスのサンプル分析によって衛星の起源(衝突説vs捕獲説)と火星の水の起源という2つの太陽系の謎に迫れる可能性があり、科学的意義は非常に大きい。
  • 通信片道遅延15〜20分の制約下で探査機がほぼ自律的に着陸・採取・帰還をこなす必要があり、火星周回軌道投入など日本が未経験の難関が連続する。

宇宙探査MMXフォボスJAXA火星

この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。