ポッドキャストクラブJapan Podcast Guide English

Hot Entry! 最新回のゲストは Rol3ert。英語でじっくり語る最新回

プレジデント音声版 · ニュース

#642 仕事の速さでも、鋭い分析でも、論理的思考でもない…一流のコンサルなら必ず持っている"たった1つのスキル"

2026-10-21 · 20分 · 3分で読める

早稲田大学ビジネススクール教授でBCG(ボストンコンサルティンググループ)元日本代表の杉田博明氏の著書『なぜ僕は変われたのか』(講談社)をもとに、一流コンサルタントが持つべき唯一のスキル「正しい問いを立てる力」を解説する。2000年代直前に実際に起きた消費者金融参入プロジェクトの事例を通じ、問いがずれたままでは高度な分析もすべて空回りに終わることを実証的に示す回。

この回を聴く 番組ページへ

この回が答えていること

  • 一流コンサルタントに求められる「たった一つのスキル」とは何か?

    正しい問いを立てるという一点に集約される。仮説も分析も資料作成も、問いが定まって初めて意味を持ち、問いがずれていればどれだけ高度なスキルを使っても仕事は空回りする。

  • 消費者金融参入プロジェクトで最初の問いはどこがずれていたのか?

    「消費者金融市場でどう勝つか」という問いで進んでいたが、本当に問われていたのは「大手消費者金融が作った市場とは何か、それはクライアントがやるべき事業なのか」だった。

  • 「お金は一色じゃない」という役員の言葉はどんな転換をもたらしたか?

    消費者インタビューを通じて「目的のために借りるお金」と「返済のために借り続けるお金」の二種類を発見し、同じ消費者金融でも動機・行動・事業リスクが全く異なると市場の定義を再構築した。

  • 正しい問いに更新した結果、クライアントはどのような最終判断を下したか?

    参入はノーゴーと判断された。与信管理やビジネスモデルの適合性・銀行全体のリスクを検討した結果で、その後のグレーゾーン金利問題と過払い金返還請求による市場縮小が判断の正しさを裏付けた。

  • 問いのずれが招くリスクは、ビジネス以外のどんな場面にも当てはまるか?

    星野編集長は太平洋戦争の意思決定(「なぜ戦争するか」ではなく「どう勝つか」しか議論されなかった)やフリマアプリの不正転売横行を例に挙げ、問いのずれがあらゆる組織で起きると指摘している。

コンサルタントの価値は「正しい問いを立てる」一点に集約される

早稲田大学ビジネススクール教授でBCG元日本代表の杉田博明氏は著書『なぜ僕は変われたのか』(講談社)の中でこう断言する。「コンサルタントに求められる力は、大部分は正しい問いを立てるという一点に集約される」。

仮説も分析も資料作成も、それ自体では価値を生まない。全ては「どんな問いに答えようとしているのか」が定まって初めて意味を持つ。問いがずれていれば、どれだけ高度なスキルを使っても仕事は空回りする。さらに厄介なのは、道具の精度が高いほどずれに気づきにくくなるという点だ。ロジックで押し切れば会議は進んだように見え、強いスタンスで言い切れば空気は締まる。しかしそれはすべて、本当の問いへの答えではない。

消費者金融参入プロジェクト──噛み合わない議論の正体

2000年代に入る前、杉田氏はある金融会社の消費者金融事業をめぐるプロジェクトに参加した。お題はシンプルに見えた。「消費者金融事業に参入すべきか否か」。

当時の大手消費者金融4社を中心とした市場は急成長しており、高い利回り、大きな成長市場、未開拓の収益源──数字だけを見れば参入は十分に合理的に思えた。杉田氏はDay1から仮説を持ち込み、ファクトで肉付けするスタイルで臨んだ。ところがクライアントの反応は薄く、「マーケットがあるのはわかったんだけど、僕が知りたいのはそこじゃないんだよね」と何度も言われた。ロジックは正しく、分析も洗練されている。それでも会議を重ねるたびに、根本で話が噛み合わないまま議論は前に進まなかった。

転換点──「お金は一色じゃない」

膠着を破ったのは、プロジェクトオーナーである役員の一言だった。外資系金融機関出身で個人向け金融サービスを長年内側から見てきたその人物はこう言った。「お金って実は一色じゃないんだよ。何のためにお金を借りるかで、金融サービスとしての意味は全く違うんだよね」。

この言葉をきっかけに、チームは消費者インタビューを実施し、借り入れの動機が二種類に分かれることを発見する。①結婚式費用や急な出費など、一時的な資金不足を給料日前に埋めるお金。②返済のために借り続け、多重債務に陥る可能性のある「お金のためのお金」。同じ「消費者金融」という枠にありながら、動機も行動も事業リスクも全く異なる性質のものだった。

問いの更新──「どう勝つか」から「やるべき事業か」へ

ここでチームは解くべき問いを根本から更新した。「高成長市場でどう勝つか」ではなく、「大手消費者金融が作り上げている市場とはどういう市場か、なぜ彼らはその市場を作れたのか、そしてそれはクライアントがやるべき事業なのか」。この問いこそがセントラルクエスチョンだったと杉田氏は振り返る。

経営層が議論した末、市場への参入は「ノーゴー」に。与信管理の仕組みやビジネスモデルの適合性、銀行全体のリスクを総合的に検討した結論だった。この判断は後に現実によって裏付けられる。グレーゾーン金利問題が表面化し、消費者金融各社は過払い金の返還請求で大きな打撃を受け、社会的イメージも著しく損なわれた。最初の問いと仮説のまま進んでいれば「参入すべき」案件だったが、正しい問いに答えることで正反対の結論に至ったのだ。

クライアントはその結果を受け「こういうことが知りたかったんだよ」と言った。杉田氏にとってこれは決定的な転換点となり、「仮説を早く立てて意思決定を後押しすることがコンサルの価値」という従来の信念を根本から問い直す契機になった。

「問いのずれ」が招く普遍的リスク

星野編集長はこの事例を受け、問いのずれが引き起こす問題はビジネスの枠を超えると指摘する。太平洋戦争の意思決定においても、軍の上層部には頭脳明晰な人材が多くいたが、「どうすれば戦争を有利に終わらせるか」には多くの議論が費やされた一方、「なぜこの戦争をしなければならないのか」という問い自体は封じ込められた。普通に戦えば必ず負けると上層部も把握していたにもかかわらず、である。

フリマアプリ(メルカリ・ヤフオク・ラクマ等)についても、本来は不用品の循環という志から始まりながら、転売・不正取得品の売買が横行する構造に変質しつつあると述べ、これも問うべき本質を後回しにした結果として「悪貨が良貨を駆逐する」状態になっていると論じた。儲かるからと放置し続ければ、消費者金融と同様に後々より大きなリスクを抱えることになると警鐘を鳴らした。

この回の要点

  • コンサルタントの本質的価値は「正しい問いを立てること」にあり、問いがずれていればどれだけ高度な分析も空回りに終わる
  • 消費者金融参入プロジェクトでは、問いを「どう勝つか」から「やるべき事業か」へ更新したことで参入見送りという正しい判断が生まれ、その後の市場崩壊が判断を裏付けた
  • 問いのずれは戦争の意思決定やプラットフォームビジネスなど組織全般に起きる普遍的リスクであり、今は儲かっても先送りすれば爆発的なしっぺ返しを招く

コンサルタント問いの設定BCG消費者金融意思決定

この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。