# #641 成績が上がるだけでなく体調もよくなる…脳科学の研究で判明「頭にも体にも効く1日15分間の"手書き"の内容」 - Show: プレジデント音声版 - Published: 2026-10-19 - Canonical: https://podc.club/episode/1525273315_685147ef9d0b.html - Audio: https://traffic.omny.fm/d/clips/a10fab0c-08e4-4ce4-abed-aeb601152bcc/fa8d9e0c-1e7b-4e5e-81c9-aebc0016b5a2/2cb9bfbf-36fe-4b7b-b25e-b4e4007e89aa/audio.mp3?utm_source=Podcast&in_playlist=2bdab59e-ba3e-4897-b598-aebc0016b5b0 - Source: この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。 文房具ソムリエ・石津博の著書をもとに、手書きが脳を活性化して体調改善・成績向上をもたらすという研究を紹介する回。プリンストン大学やテキサス大学のペンベイカーらの実験を詳説しながら、プレジデント編集長・星野孝彦が「その研究は手書きvsキーボードを比べたものではない」と批判的に読み解く。後半は星野自身のラミーのペン、パイロットVコーン、メカニカルキーボードへのこだわりに話が広がる。 ## この回が答えていること ### テキサス大学のペンベイカーが行った「手書き実験」とはどのようなものだったか? ペンベイカーは複数の失業者を対象に毎日20分・5日間、自分の気持ちを手書きさせ、8カ月後の再就職率を比較した結果、手書き群は何もしなかった群よりはるかに高い再就職率を示した。別の実験では、最も意味のある個人的体験を1日15分・数日間書いた学生は体調が改善し学業成績も向上したと報告されている。 ### 手書きがパソコン・スマホより学習効果が高いことは科学的に証明されているのか? 複数の研究で支持されているが議論は続いている。プリンストン大学のミューラーとオッペンハイマー(2014年)はPC入力が知識吸収を妨げると報告したが、2021年の別チームによる追試では差が確認されなかった。ノルウェー科学技術大学(2020年)は脳波計測で手書きがより多くの脳領域を活性化すると実証している。 ### ノルウェー科学技術大学の研究では手書きとタイピングの脳活動にどんな違いが判明したか? 2020年にオードリー・ファン・デル・メール教授のグループが脳波を計測した結果、手書きはタイピングより脳の多くの領域を活性化し、より複雑な神経ネットワークのつながりを生み出すことが判明。これが新しい情報の記憶定着と学習パフォーマンスの向上に不可欠だとされた。 ### 編集長・星野は手書き礼賛記事のどこを問題だと指摘しているか? ペンベイカーの実験は手書きvsキーボードを比べたものではなく「個人的な感情・体験を書くかどうか」という書く内容の違いを検証したものだと指摘。プリンストン・UCLAの2014年研究も2021年に追試で再現されなかったと述べ、「どちらが良くてどちらが悪いとは一概には言えない」と結論づけた。 ### 編集長が実際に愛用している文房具やデジタル周辺機器はどれか? ペンはラミー(LAMY)のサファリ(現在は三菱鉛筆ユニ傘下でジェットストリームの芯を入れたモデルも展開)と、校正用にパイロットのVコーン(キャップ式水性ボールペン)を愛用。キーボードは青軸のメカニカルキーボード(約3万円)、マウスはロジクールのマラソンマウスを使っている。 ## 本文 ## 紹介する記事の概要 プレジデント編集長の星野孝彦が紹介するのは、文房具ソムリエ・手帳プロデューサーの石津博による記事「成績が上がるだけでなく体調も良くなる。脳科学の研究で判明、頭にも体にも効く1日15分間の手書きの内容」。石津氏は7歳から実家の文房具店の店頭に立っていた経歴を持ち、著書『文房具ソムリエの手帳時間』(三笠書房)の一部を再編集した内容となっている。星野は「文房具ソムリエで実家も文房具店という立場なので、多少割り引いて読む必要はある」と前置きしつつ、内容を紹介していく。 ## 手書きの効果を示す主な研究 記事が挙げる根拠は複数の研究だ。 **プリンストン大学とUCLAの研究(2014年)**:ミューラーとオッペンハイマーは、パソコンだけでメモを取ると新しい知識を吸収しづらくなるという結果を報告した。 **テキサス大学のジェームズ・ペンベイカー(1986年)**:個人的な感情や体験を手書きで書くことが心理的・身体的健康に良い影響を与えると報告。複数の失業者を対象に毎日20分・5日間、自分の気持ちを手書きさせ、8カ月後に再就職率を調査すると、手書き群は何もしなかった群よりはるかに高い再就職率を示した。さらに別の実験では、「自分にとって最も意味のある個人的体験」を1日15分、数日にわたって書いた学生は体調が改善し学業成績も向上したという。 **ノルウェー科学技術大学(2020年)**:オードリー・ファン・デル・メール教授のグループが脳波を計測し実証。手書きはタイピングより脳の多くの領域を活性化し、より複雑な神経ネットワークのつながりを生み出す。これが新しい情報の記憶定着と学習パフォーマンスの向上に不可欠だとされている。 また、脳神経内科医・長谷川義也氏の著書『ノートを書くだけで脳がみるみるよみがえる』も、手書き特有のビジュアル要素が記憶定着に有効だとしている。メリーランド大学のエドウィン・ロックとトロント大学のゲイリー・レイサムによる目標設定研究では、目標を書き出すことでモチベーションが高まり達成行動を具体化しやすくなることも示されており、手書き手帳は目標の「見える化」ツールとして機能するとも紹介された。 ## 脳科学から見た手書きのメカニズム 記事によると、手書きは五感をフル稼働させる統合的な脳活動だ。紙に触れる感触、インクや紙の香り、ペンを走らせる音、漢字や表現を思い出す記憶処理——これらがすべて同時に行われる。一方でパソコン・スマホでは機械に触れる触感だけで視覚・嗅覚・聴覚の刺激はほぼない。漢字変換や文章生成まで機械が補助するため脳の負荷は最小化される。記事はパソコン・スマホを「脳の甘やかし屋さん」と表現している。 ## 編集長・星野の批判的コメント 星野は記事を肯定的に紹介しながらも、いくつかの点で留保をつける。まず、ペンベイカーの実験は「手書きvsキーボード」を比べたものではなく、「個人的な感情・体験を書くかどうか」という書く内容の違いを検証したものだと指摘する。また、プリンストン・UCLAの2014年研究は2021年に別チームが追試したところ手書きとパソコンで講義の理解度に明確な差が出なかったという報告もあると述べた。 「手書きで刺激される脳の範囲があれば、タイピングで刺激される脳の範囲もある。手の動かし方が全然違うわけだから脳の働き方も違い、それがパフォーマンスの差につながるかはまた別の話」と結論づけ、タイピングには素早く済む時間的メリットもあると強調。スケジュール管理を紙の手帳に戻すことは考えられないし、家族とのスケジュール共有はデジタルでやりたいとも語った。 ## 編集長の文房具・周辺機器へのこだわり 話は記事の内容から星野自身の文房具愛に発展する。以前はドイツのラミー(LAMY)のサファリモデルを愛用していた(ラミーは2024年に三菱鉛筆ユニ傘下に入り、サファリにジェットストリームの芯を入れたモデルも展開している)。校正作業ではパイロットのVコーン(キャップ式水性ボールペン)と決めており、キャップを外して「よし、赤字を入れるぞ」という気合いが生まれるのが気に入っているという。文具置き場にある備品を使わず、わざわざVコーンを自分で買うほどだ。 キーボードはキー1個ずつに独立したスイッチを持つメカニカルキーボードを約3万円で購入し、一番カチカチと音がする青軸を使用。マウスはロジクールのマラソンマウスを愛用している。 本はKindleで多く読むが、本当に楽しみたい作品は紙の本で読む。何ページ読んだかが感覚でわかること、「どこの椅子で読んだか」という場所と記憶が結びつきやすいことが理由だ。茂木健一郎が勧める「旅先での読書」や、丸谷才一の著書『ロンドンで本を読む』にも触れ、脳は場所・時間・道具と記憶を紐づけると述べた。 最後に、ほぼ日手帳がスケジュール管理ではなく日記的に個人的体験を書きやすい設計であることに触れ、「自分にとって最も意味のあった体験を15分書く習慣を来年こそ試してみたい」と語って締めくくった。 ## この回の要点 - テキサス大学・ペンベイカーの研究では、最も意味ある個人的体験を1日15分書くだけで体調改善・成績向上が起きたと報告されている。 - 手書き効果の主要研究は追試で再現されないケースもあり、手書きvsタイピングの優劣はまだ科学的に決着がついていない。 - ラミーのサファリやパイロットのVコーンなど道具へのこだわりが集中や記憶の定着に影響するという実感を、編集長自身が語っている。