#630 若手の成果を喜べない→「俺のおかげ」と猛アピール…職場で敬遠される中年男性が口に出せない"4文字の本音"
臨床心理士・中島美鈴の著書『深い中年の危機から抜け出す本』(精神出版社)を元に、職場で自慢話をしたり部下の手柄を横取りしたりする中年男性の行動の根底には「寂しい」という4文字の感情があると解説する回。承認欲求が満たされない悪循環のメカニズムと、自己決定の少ない人生を歩んだ人ほど他者からの評価に依存しやすくなる理由も扱われる。プレジデント編集長・星野貴彦自身がNHK退社や慶應付属中学の選択を例に、自己決定と後悔の関係を語るパートも含む。
この回が答えていること
職場で『俺のおかげ』と自慢話をしたり部下の報告を否定から入ったりする中年男性は、本当は何を求めているのか?
自慢話や否定から入る態度の根底にあるのは、認められたい、必要とされたい、愛されたいというシンプルな欲求であり、寂しさを言葉にできない代わりにそうした行動として表れている。
プレイヤーからマネージャーに昇格すると、なぜ承認欲求が満たされにくくなるのか?
プレイヤー時代は売上目標達成など成果が数字で明確に現れ、上司の賞賛や給与・ボーナスという形で承認を得られたが、マネージャーになると成果を出すのは部下であり、自分は褒める側・評価する側に回るため承認を得にくくなるから。
昭和生まれのミドルエイジ男性が『寂しい』という言葉を口にできないのはなぜで、その感情はどう表れるのか?
昭和生まれのミドルエイジ男性は弱音を吐くことを恥と感じる傾向があるため寂しいと言えず、その感情は認められないまま、部下や妻に当たる、過去の栄光を語り続けるといった別の形の行動として噴き出す。
自己決定の少ない人生を歩んだ人はなぜ承認欲求が強くなりやすく、それは男女でどう違うのか?
進学・就職・結婚などの節目で親や周囲の期待に応え続け、自分で人生を選んできた実感がないため承認への依存が強まりやすく、男尊女卑的な価値観の残る地域で育った女性に特に現れやすい。
承認欲求に振り回されないために、記事はどのような対処法を提案しているか?
承認欲求を感じた瞬間に感情を否定せず、『今自分は認められたいんだな』と距離を置いて観察すること。感情を認めるのと周囲にぶつけるのは別で、ジャーナリングやカウンセリングで整理し、自己決定を積み重ねることが悪循環を断ち切る出発点になるとする。
承認欲求はミドルエイジでむしろ強くなる
人はいくつになっても、他者から認められたい・自分を価値ある存在として認めたいという承認欲求を持つ。しかし臨床心理士の中島美鈴によれば、クライアントの中年層はむしろ若い頃より承認欲求が強くなっている傾向があるという。
理由は役割の変化にある。20〜30代のプレイヤー時代は、売上目標の達成・新規顧客獲得・プロジェクトの予算内完遂といった成果が数字で明確に現れ、上司の賞賛や給与・ボーナスという形で承認が得られていた。ところがマネージャーに昇格すると、数字を出すのは部下や後輩であり、自分は「褒める側・評価する側」にまわらなければならない。「自分もこんなに頑張っているのに誰も見てくれない」という感覚が生まれやすくなる。
口に出せない「寂しい」が別の形で噴き出す
カウンセリングを受けたAさん(52歳・男性・会社員)は、昇進して残業が減り家にいる時間が増えたものの、「妻には冷たくされ、息子は週末も家にいない。部下は優秀で成果を出しているが、誰も自分を必要としてくれない。寂しい」と語った。
中島はここで、「寂しい」という言葉が昭和生まれのミドルエイジ男性には口にしにくいと指摘する。弱音を吐くことを恥と感じる傾向があるため、寂しさは認められないまま別の形で表れる——部下や妻に当たる、過去の栄光を語り続ける、といった行動がその典型だ。根底にあるのは「認められたい、必要とされたい、愛されたい」というシンプルな欲求である。エピソード・タイトルの「4文字の本音」とは、この「寂しい」を指す。
周囲を遠ざける「承認欲求行動」4パターン
記事では、承認欲求が満たされない人が職場でとりがちな4つの行動が挙げられる。①若手が評価されると「俺がサポートしたからだ」と自分の手柄にしようとする、②会議で自分の過去の成功体験を語り始める、③部下の報告に「でも俺が思うに」と否定から入る、④ちょっとしたことで「ありがとう」「すごい」と言ってもらえないと機嫌が悪くなる——の4つだ。
これらに共通するのは、話題が相手から自分へと移っていくことだ。若手は「またあの話か」とうんざりし、上司は「扱いにくい」と感じ、同僚は避けるようになる。受け止めてくれる人が減るほど承認欲求はさらに満たされず、求める行動がエスカレートするという悪循環に陥る。
自己決定の少ない人生ほど承認依存に陥りやすい
現場を離れた管理職だけでなく、これまで親や周囲の期待に応え続けて自分では選んでこなかった人にも同じ傾向が現れると中島は述べる。進学・就職・結婚といった節目に外圧を受けやすかった環境——特に男尊女卑的な価値観の残る地域——で育った女性に現れやすいという。
Dさん(49歳・女性)は「実母に人生の選択を左右されてきたため、自分で人生を切り開いた実感がない」と語る。介護が始まって実母との関係が変わり、蓋をしていた「歩んでいたかもしれない別の人生」へのもやもやが顔を出したという。他者の意向を優先し続けることで、承認される状態への依存が強まる。
対処法は「寂しい」と言葉にするところから
記事の提案は、承認欲求を感じた瞬間に感情を否定するのでなく、「今自分は認められたいんだな」と少し距離を置いて観察することだ。感情を認めることと、それを周囲にぶつけることは別の話——部下の手柄を自分のものにしてよい理由にはならない。
星野編集長はジャーナリング(日記を書いて思考を外部化すること)やカウンセリングの効果に触れた。モヤモヤを文字にすることで心が整理され落ち着くという。
自己決定の重要性については自身の経験も語られた。NHKの記者を2年でやめてプレジデント社へ転職したこと、小学6年時に親の反対を押し切って慶應義塾付属の中等部を選んだこと——なんとなくであっても自分で決めた経験があることで、後悔の「色合い」が変わると星野は言う。自分で選んでいれば「あの時こうしていれば」という思いに縛られにくく、選んでいないほど別の人生への妄想から逃れにくくなる。寂しさや承認欲求への気づきと、自己決定の積み重ねが、悪循環を断ち切る出発点になるという結論だ。
この回の要点
- 承認欲求が満たされない中年男性が自慢話や手柄横取りをするのは「寂しい」という4文字を口にできないから。昭和的価値観が感情表現を抑圧し、別の行動に変換させてしまう。
- 承認欲求を満たそうとする行動は周囲を遠ざけ、さらに承認を求める悪循環を生む。自慢話・否定口癖・功績の横取りは話題を相手から自分へ移す点が共通している。
- 対処の第一歩は「今自分は認められたいんだな」と感情を否定せず言葉にすること。ジャーナリングやカウンセリングで思考を外部化すると気持ちが整理され、欲求に振り回されにくくなる。
この記事は、配信音声の冒頭30分ぶんを機械で文字起こしし、それをもとに編集したものです。番組の公式な要約ではありません。正確な内容は本編をお聴きください。