# なぜ報道番組は「らしい」と言わないのか? #481 - Show: ゆる言語学ラジオ - Published: 2026-10-20 - Canonical: https://podc.club/en/episode/1550243290_f542c2512c7c.html - Audio: https://api.robotstart.jp/api/for-media/v1/articles/35d00481/permanent/with-advertise/podcast/6fc620a693a8a6a7e3f6595727f26c65.mp3 - Source: Edited from a machine transcript of the first 30 minutes of the episode. Not an official summary. 「雨が降っているようだ」と「雨が降っているらしい」はなぜ違う表現なのか。第481回では、話し手がその情報をどこから・どのように得たかを言語的に示す「エビデンシャリティ(証拠性)」という概念を軸に、現代日本語の「ようだ」「らしい」「だろう」「見られる」などの使い分けを解説する。報道でキャスターが「らしい」をほぼ使わない理由や、新しい表現「〜臭い」のエビデンシャリティ的性格についても踏み込んだ。 ## What this episode answers ### 「ようだ」と「らしい」の判断根拠はどう違うのか? *(Not answered in the article body — please listen to the episode.)* ### 「だろう」はエビデンシャリティに含まれるのか? *(Not answered in the article body — please listen to the episode.)* ### 報道で「らしい」がほとんど使われないのはなぜか? *(Not answered in the article body — please listen to the episode.)* ### 報道の「と見られる」はどんな情報に使われ、なぜ日常会話では聞かないのか? *(Not answered in the article body — please listen to the episode.)* ### 「〜臭い」は「〜ぽい」と同じエビデンシャリティ表現なのか? *(Not answered in the article body — please listen to the episode.)* ## Article ## 言語にも「メタデータ」がある スマートフォンで写真を撮ると、撮影日時・撮影場所といった「メタデータ」が画像データに付与される。番組はこの比喩から出発し、「言語もメタデータを同時に伝えている」という観察を紹介する。「雨が降っているようだ」という文は「雨が降っている」という情報だけでなく、「自分がどのような根拠でそう判断したか」という情報も乗せている。このように情報源や判断根拠を言語的に示す形式を**エビデンシャリティ(証拠性)**と呼ぶ。参照した文献は『現代日本語文法 第8部 モダリティ』。 ## 「ようだ」「らしい」「だろう」の三すくみ 「ようだ」は話し手が**直接観察した証拠**を根拠にする推定の典型形式。外を見て濡れた地面を確認して「雨が降ったようだ」と言う、机を片付け始めた同僚を見て「そろそろ帰るようだ」と言う、といった用法が挙げられた。感覚的・視覚的情報をもとに判断しているため、「ようだ」と言った時点でその判断に一定の責任が伴う印象がある。 「らしい」は**間接的な根拠・伝聞**が典型的な用法。ゴシップや噂話に「らしい」が自然に現れる理由がここにある。番組ではラランドのYouTubeチャンネルでサーヤさんが令和ロマンの煙さんについて「めっちゃエッチ上手いらしいよ」と言っていた例が挙げられ、「伝聞だかららしいが使われる」と解説された。ただし「パソコンの電源が入らない、壊れてしまったらしい」のように観察に基づく用法もあり、「ようだ」との境界は一部重なる。 「だろう」は「カナダでは今雨が降っているだろう」のように、特定の根拠を示さない推量。観察なしで思ってしまっているのが「だろう」であり、エビデンシャリティには基本的に関与しないと整理された。 ## 報道のエビデンシャリティ──「見られる」と「らしい」の対比 報道文には独自のエビデンシャリティ表現が発達している。番組では実際に新聞記者への聞き取りをもとに、以下の使い分けを紹介した。 - **「と見られる」**:警察など非公式ルートで取材し、複数方面から裏取りがほぼ済んでいるが完全には確定していない情報に使う。警察の公式発表にはこの形式は使わない。 - **「という」「によると〜」「とのこと」**:公式発表など、オフィシャルな情報源を明示する際に用いる。 - **「らしい」**:報道では使わないのが慣行。「警視庁によると容疑者はAらしいです」では仕事をしていないように聞こえる。「ようだ」は話し手がその情報に責任を持っている印象があるため「らしい」よりは報道向きだが、それでも「と見られる」ほどは使われない。 「見られる」は日常会話でほぼ聞かないにもかかわらず意味が通じる表現だが、監修の高田先生によれば「見る」には「視覚情報を捉える」だけでなく「判断する」という意味もある(「恐竜絶滅の原因を隕石の衝突と見る」)。この「判断する」の意味が変遷して「と見られる」という報道形式が生まれたのではないかという。 なお「〜そうだ」も別軸のエビデンシャリティとして登場する。「雨が降り出しそうだ」は兆候・兆しが現在存在していることを表す形式であり、「ようだ」「らしい」とは異なる根拠の種類に基づいている。 ## 新表現「〜臭い」はどこに位置づけられるか 「やらかした臭い」「テスト受かった臭い」といった「〜臭い」という表現が、エビデンシャリティ的な新表現として俎上に上がった。「〜ぽい」とほぼ交換可能に見えるが、「この辺りは昔沼地だった臭い」は不自然なのに「沼地だったっぽい」は自然であるなど、振る舞いが異なるケースがある。また、ハンター×ハンターでキルアが使った「かなり無理臭い」は直接観察ではなく推測に近い文脈であったと指摘され、間接的証拠に近い用例とも取れるという。結論は出ず、番組はリスナーへの考察募集で締めくくった。 ## Takeaways - 「ようだ」は直接観察、「らしい」は伝聞など間接証拠、「だろう」は根拠なし、という判断根拠の種類によって日本語のエビデンシャリティ表現は使い分けられている。 - 報道で「らしい」が使われないのは無責任な印象を与えるためで、代わりに「と見られる」(裏取り済み未確定)と「という/によると」(公式情報)を厳密に使い分けている。 - 我々は情報を発話するとき、その情報をどこからどのように得たかというメタデータも同時に言語化しており、この複雑な処理を無意識・自動的に行っている。